東芝の島田太郎社長を語るうえで欠かせない言葉がある(撮影:梅谷秀司)
「彼はビジョナリストなので、先の展開を考えるのが大好き」(ある東芝幹部)。
その彼、東芝の島田太郎社長を語るうえで欠かせない言葉が「ビジョン」だ。島田社長の口からも「私はビジョナリーな人間」といった表現が飛び出す。これは「先見性のある人間」とでもいえばいいのだろうか。
実際、その視線は未来へと向けられている。
東芝のデータ戦略を尋ねると、「僕がやろうとしているのは、『ウェブ3.0』を現実の世界に持ち込むこと。それが人類のためになると思うから」と真剣に語る。
「東芝の改革は、遠雷のごときであります」
ウェブ3.0といえば、グーグルなどの巨大IT企業にデータが集約・支配されず、個人が直接データを取引する世界観だ。その新潮流を東芝の事業に早速落とし込もうと思考を巡らす。
その結果、プレゼン資料などで出てくるのは、量子技術の実用化を視野に入れた「QX(クオンタムトランスフォーメーション)」など、一般人の頭を悩ます新語だ。
一方で社員向けのメッセージを見ると詩的な表現も用いる。
「私からすると、東芝の改革は、遠雷のごときであります。遠くでゴロゴロと鳴っているが、自分には関係のないことだと、普段の仕事をしている。これでは、本当の改革は達成できないのであります」
そのような島田社長は1966年生まれの55歳。1990年に甲南大学理工学部を卒業し、新明和工業に入社する。入社後の約10年は航空機の設計業務に携わった。
この間、米ボーイング社や米マクドネル・ダグラス社といった海外航空機メーカーへの出向も経験。当時は「余裕で月200時間くらい残業していて、家内には私は独りぼっちだとよく怒られていた」(島田社長)という。
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