世界にその名を知られたアベノマスク。巨額の税金を投入して1世帯に布製マスクを配るというその政策は海外でも「これはジョークではない」と報じられた。その是非はともかく不思議なことが現在も続いている。マスクの単価を政府が明かすことを拒んでいるのだ。
「見積書」と書かれた文書には「211,750,000」と書かれている。2億1175万円ということだ。その下に「ベトナム産抗菌布マスク生産原料調達一式 と書かれている。その横には「数量」、「単価」。その部分は黒塗りとなっている。
別の「見積書」には「308,000,000」と書かれている。3億800万円だ。その下には、「ベトナム産抗菌マスク輸入業務一式」と書かれ、同じように「数量」と「単価」は黒塗りとなっている。
何れも安倍政権が新型コロナ対策の目玉として行った布製マスクの配布、「アベノマスク」の業者の見積書だ。神戸学院大学の上脇博之教授の情報公開に対して厚生労働省が開示した。この時に開示された政府の資料では、単価が100円から200円となっているが、全てのマスクについて単価が黒塗りになっている。その効果について議論が出たからか、アベノマスクの単価は「機密」の扱いということか。
この「アベノマスク」は約260億円かけて全国の世帯や学校に配布されている。世帯向けは厚生労働省、学校向けは文部科学省が行っている。このため上脇教授は両省に情報の開示を求めたが、その結果、黒塗りの大量の文書が送られる結果となっている。
因みに「2億1175万円」は見積もり通り「2億1175万円」で納品されている。「3億800万円」も見積もり通りの額で納品されている。業者の見積もり通りに税金が支払われたということだ。
上脇教授によると厚生労働省への情報開示を行ったのは4月。なかなか開示されず「黒塗り文書」を手にしたのは8月27日だった。上司からの指示だろうが、必死で単価を隠そうと作業をした同省の係官には同情を禁じえない。
上脇教授は話す。
「厚生労働省、文部科学省ともに、黒塗りの理由を、『公にすることにより、契約単価が判明し今後の価格交渉などに支障を及ぼす恐れが有る』としていますが、納得できる説明ではありません」。
上脇教授は、これは政策の失敗を隠すためだと考えている。
「政策を国民に全て開示してその当否を議論させ、そこからの教訓を学ぶのが真のコロナ対策に役立つわけです。今後同じような形でマスクの配布を繰り返すことなどおよそあり得ないでしょう。あってはならない税金の無駄使いです。過去の失敗にフタをしていては、現在と将来の真に有効なコロナ対策を見失う結果となります」。
上脇教授はマスクの単価について国に開示を求める裁判を週明けの9月28日に大阪地方裁判所に起こすことにしている。
弁護団長の阪口徳雄弁護士は、問題は政府の意思決定の不透明さにあると指摘する。
「この裁判はマスクの価格を問題にしているものでも、マスクの効果を問題にしているものでもなく、政府の意思決定の不透明性を問うものだ。1枚100円から200円という高価なマスクも、緊急事態なら仕方ないとも言える。しかし、どういう形で業者が決まり、価格が決まったのか、そういう点を明らかにする必要が有る」。
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September 27, 2020 at 05:43AM
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