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Friday, April 14, 2023

すばる望遠鏡とカナリア大望遠鏡が連係しブラックホール連星合体を追観測(2023年4月14日)|BIGLOBEニュース - BIGLOBEニュース


国立天文台(NAOJ)と千葉工業大学(千葉工大)の両者は4月13日、すばる望遠鏡とスペイン・カナリア天体物理研究所のカナリア大望遠鏡という、北半球にある2つの大型光学望遠鏡を用いて、ブラックホール同士の合体による重力波事象をこれまでにない深さで追観測し、その電磁波放射現象「キロノバ」の可能性に制限を与えたことを共同で発表した。
同成果は、NAOJの大神隆幸研究員(研究当時)、カナリア天体物理研究所のホセファ・べセラ・ゴンサレス研究員、NAOJ 科学研究部の冨永望教授、千葉工大 惑星探査研究センターの秋田谷洋上席研究員、同・諸隈智貴主席研究員らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
2017年の中性子星同士の合体による重力波事象「GW170817」では、光学望遠鏡による追観測において、同事象に対応するキロノバが初めて有意に検出された。なおこの時は、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「HSC」や多天体近赤外撮像分光装置「MOIRCS」を用いた観測では、中性子星連星合体において「rプロセス元素合成」が起こっていることが確認されている。
しかしこの例を除くと、重力波事象と明確に関連づけられる電磁波放射は観測されておらず、重力波を検出した後、いかに素早く高感度の追観測を光学望遠鏡で行うかが重要な課題となっているという。
重力波望遠鏡による重力波の観測では、検出されたうちのおよそ90%をブラックホール連星の合体が占めている。ブラックホールは、事象の地平面を越えてしまうと光すら脱出できないことはよく知られた事実だ。そのため、ブラックホール連星合体においても、通常なら電磁波が放射されるとは考えられないとされる。
しかし、2019年に検出されたブラックホール連星合体からの重力波事象「GW190521」では、電磁波対応天体の候補が検出されたとの報告があり、電磁波を放射する複数のメカニズムが理論的に提案された。そのため、さまざまな波長の電磁波で追観測が行われ、本当にブラックホール連星合体から電磁波が放射されるのか、放射されるとするとどの程度の明るさなのか、という点を解明することが求められている。そのため、さまざまな可能性を検討する上でも、望遠鏡観測による明るさの測定が不可欠だという。

そして2020年2月24日、米国の重力波望遠鏡「LIGO」と、イタリアとフランスを中心とした重力波望遠鏡「Virgo」は、ブラックホール連星合体からの重力波事象「GW200224_222234」(以下「GW200224」)を検出。一般に、重力波望遠鏡の「視力」は、人間の視力に換算すると約0.0008と非常に悪く、同重力波の到来方向は典型的には「満月2000個分(500平方度)の範囲のどこか」というレベルだ。
しかし、GW200224は重力波が強く、その到来方向が約50平方度に限定されていた。そこで研究チームは、すばる望遠鏡とカナリア大望遠鏡を連係させた追観測を実行することにしたという。
重力波の検出からわずか12時間後、HSCを用いた撮像観測が行われ、急激な光度変化を起こした突発天体がその方向にあるか探査が行われた。この観測は到来方向の91%をカバーし、ブラックホール連星合体による重力波事象に対し、その到来方向の大部分をカバーする観測としては、これまでで最も深い観測となった。
そして発見された突発天体の光度変動を精査し、カナリア大望遠鏡の分光器「OSIRIS」により、突発天体が属する銀河の分光観測を実施。その銀河までの距離を決定し、最終的にGW200224に対応する可能性のある天体が19天体同定された。ただし、この中でGW200224との関連が強く示唆される天体はなかったという。
対応天体がないとすると、2019年のブラックホール連星合体(GW190521)で報告されたものと同様の電磁波放射現象は、GW200224には付随していなかったことになる。このことから研究チームは、ブラックホール連星合体からの電磁波放射現象には、多様性があることが示されているとしている。
2023年5月からは、LIGO(2台)、Virgoに日本の重力波望遠鏡「KAGRA」を加えた計4台での観測が再開される予定で、性能が向上したこれらの重力波望遠鏡が連係することにより、さらに多くの重力波事象がより詳細に検出されることが期待されている。そして、多様な重力波天体の素性を明らかにするため、研究チームは今後も、すばる望遠鏡とカナリア大望遠鏡を連係させた電磁波の追観測を行っていくとした。

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