今回の相続税・贈与税の改正では、これまで敬遠されてきた相続時精算課税の使い勝手向上にも光が当たりそうだ。そもそも誰が使っていたのか。政府税制調査会で初公開された利用実態から、一部の超富裕層が活用していたことが分かる。どんな場合だとお得なのか。特集『さよなら!生前贈与』(全9回)の#6では、2023年度の税制改正で注目を集めそうな相続時精算課税制度について深掘りする。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
使い勝手の悪い相続時精算課税
250億円超を贈与できる超富裕層が活用?
「相続時精算課税制度は広く活用されているとは言えない状況にある」――。
2023年度の税制改正大綱の策定に向けて、相続税・贈与税の法改正の論点を議論した政府税制調査会の専門家会合。10月5日の会合で、財務省の担当者は現行制度の問題点について冒頭のように指摘した。
贈与には毎年110万円の非課税枠がある一般的な「暦年課税」と、2500万円までの贈与には贈与税がかからないが相続発生時に相続財産に加算して課税する「相続時精算課税」という二つの制度がある。
03年度の税制改正で創設された相続時精算課税は、どのタイミングで贈与したとしても税負担が変わらない「資産移転の時期に中立的な、相続税と贈与税の一体化」という今回の改正の目的を先取りした制度だった。
しかし、財務省の担当者が指摘したように、利用が広がらない一因として、使い勝手の悪さがある。いったん相続時精算課税制度を利用すると選択した場合、その後の贈与の際にはたとえ少額であっても税務署への申告が義務付けられる。贈与の申告や記録の管理にかかる手間が増えてしまうのだ。
今回の税制改正では、相続時精算課税の使い勝手を向上させる内容も盛り込まれる方針だ。
もともと、相続時精算課税を利用して恩恵がある人は限られるというのが、相続を専門とする税理士の間での共通認識だった。そして、今回の政府税調の専門家会合に財務省が提出した資料から、相続時精算課税制度の利用実態が初めて明らかにされた。
資料から見えてきたのは、一部の超富裕層が相続時精算課税制度を活用していたという実態で、250億円超をこの制度を使って贈与しているケースもあった。いったいどんな場合だと相続時精算課税を選択するメリットがあるのか。
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