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Saturday, November 5, 2022

隕石や小惑星の衝突から地球を防衛するSFのようなミッションが始動|@DIME アットダイム - @DIME

2022年9月26日、アメリカ航空宇宙局NASAは、驚くべき実験を実施した。実験は成功。管制室は拍手喝采、歓喜の声が上がったという。では、どのような実験かというと、宇宙船を隕石に衝突させて、隕石の軌道を変更させるというもの。目的は、Planetary Defense。隕石の衝突から惑星、つまり地球を守るということだ。SF映画のような話だが、本当に地球に隕石衝突の脅威などあるのだろうか。なぜ、NASAはこのようなミッションを実施しているのだろう。

実感が湧かない隕石落下だが…

隕石と聞くと、何を思い浮かべるだろうか。

最近であれば、2020年7月2日に関東地方上空に大火球(かきゅう)があらわれ、千葉県習志野市や船橋市に落下した隕石、「習志野隕石」が記憶に新しいかもしれない。他にも国内外で同様の多くのニュースが流れていることだろう。

日本でも、近年、火球の目撃情報が多発し、度々SNSやニュースで報道されている。火球とは、国際天文連合IAUの定義によると、絶対等級でー4等よりも明るい流星と定義している。ちなみに、流星とは、大気圏突入時に大気の分子と衝突し、大気で消滅するもの。隕石とは、流星と過程は同様だが、残った破片が地球に到達するものと定義されているようだ。

では、どれくらいの数の隕石が、地球に落下しているのだろうか。

少しだけ古いデータになるが、2019年から2020年の1年間の間に、地球に落下する宇宙からの物体の数の定量化に成功した研究チームがある。それは、マンチェスター大学とインペリアルカレッジロンドンの研究チームだ。彼らによると、地球には1年間におおよそ17,000個だという。

実際に、この数を聞いて、こんなに多くの隕石が地球に降っているのかと驚かれたかたのほうが多いのではないだろうか。我々の実感として、隕石を見る機会、目撃事例は、多くの人にとってほぼゼロだろう。おそらく地球の表面積の7割が海であること、そして夜空を見上げる機会も多くはないということが、その理由として挙げられるだろうが、実は、隕石の多くは南極に落下しているという。

なら安心……というわけにはいかない。これまでに、巨大な隕石が落下した事例がある。例えば、ナミビアの8万年前にナミビアにホバという60tにもなる隕石や、2016年にアルゼンチンにガンセドという30t以上の隕石などだ。大きな影響はなかったようだ。上記の17,000個の隕石の多くは50gから10kgの重さ。10kgは希だという。しかし、重さがどうであれ、都市部などに落下すれば、大きな人災は免れないだろう。

隕石衝突により恐竜が絶滅したように、そのインパクトははかりしれない

また、6600万年前に、直径10kmにもある超巨大な隕石がメキシコ湾に落下した。チチュルブ衝突と呼ばれるこの衝突で、当時地球上に生息していた恐竜などの全生物の76%が絶滅したとされる大きな隕石衝突だ。学者や専門家の中には、恐竜絶滅説など様々な諸説があるようだが、このような巨大隕石の衝突は、地球への影響、強いてはわたしたち人類を含めた地球上の全生物の生存の有無に大きな影響を及ぼすことは計り知れないことは、お分かりいただけるだろう。

危険な小惑星が地球の周りに多数存在

地球近傍の小惑星において、地球との衝突の可能性が高く、衝突により地球への影響が大きいものを潜在的に危険な小惑星PHA(Potentially Hazardous Asteroid)と呼ぶ。

その理由は、小惑星の大きさが40mを超えると、地球に衝突したときには、原子爆弾の1000倍以上のエネルギーを持つといわれており、地球に甚大な被害をもたらすことが予測されるからだ。

では、PHAはどれくらいの数があるのだろうか。国際天文連合IAUが公表されているPHAのリストがある。正確な数までは把握できないが、1000個以上と相当な数がある。

このPHAのニュースとして最近話題になったのは、小惑星「7482」だろう。直径1kmの小惑星「7482」は、2022年1月18日に地球に最接近したのは記憶に新しい。地球から200万km離れた場所を通過するので、衝突の危険性はなかったが、この「7482」は、NASAのジェット推進研究所JPLでは、PHAに分類している。

このように地球は、小惑星の接近などの危険にさらされるタイミングが来る。最悪、本当に衝突してしまう、そんな可能性も完全に否定することはできないだろう。

地球に落下する小惑星

小惑星から地球を防衛する取り組みとは?

実は、NASAでは、PDCO(Planetary Defense Coordination Office)という組織が組成され、地球近傍の小惑星の観測や衝突回避に関する技術開発などにあたっている。そして、冒頭で紹介したとおり、2022年9月26日、NASAは、驚くべき実験を実施し成功した。それは、宇宙船を隕石に衝突させて、隕石の軌道を変更させるというものだ。これは、先述してきた隕石や小惑星の脅威から地球を守るための実験なのだ。

具体的には、DART(Double Asteroid Redirection Test)という。潜在的な小惑星や彗星の危険から地球を守るための技術をテストするためのミッション。2つの惑星で構成されている二重小惑星システム「Didymos」を周回している小惑星「Dimorphos」にDART探査機という宇宙船を衝突させるというもの。衝突させることで小惑星「Didymos」の軌道を変更できるかどうかというテストをしたのだ。

NASAが進めるDART

衝突は、成功。DART宇宙船は、直径160mの小惑星「Dimorphos」の中心から16〜17mずれた地点に、22,500km/hの速度で衝突したという。衝突するときの動画も公開されている。

今後は、地球上の望遠鏡を使用して、小惑星「Dimorphos」を観察し、DART宇宙船の衝突が小惑星「Dimorphos」の軌道を変更したことを確認していくという。研究者は、この影響により小惑星「Dimorphos」の軌道が約1%、つまり公転周期が約10分短縮されると予想しているという。

これほどの多くの地球に衝突する危険性のある小惑星があることにまず驚く。そしてその脅威が、完全にゼロではないことも否定できない。そして、NASAが、衝突を回避するための実験を行なっていることに驚く。このように地球、そして我々人類の生存をも脅かす重大事象を回避する実験は、このように始まったばかりなのだ。

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。新刊「ビジネスモデルの未来予報図51」を出版。各メディアの情報発信に力を入れている。

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