国際通貨基金(IMF)は11日、世界経済見通しの悪化を警告した。数十年ぶりの高インフレを抑制する取り組みが、ロシアによるウクライナ侵攻や中国の景気減速に伴うダメージを深める可能性を浮き彫りにした。
IMFはこの日公表した最新の世界経済見通し(WEO)で、政策の計算ミスのリスクは急上昇しており、成長は依然として脆弱(ぜいじゃく)で、市場はストレスの兆候を見せていると指摘。世界経済の約3分の1は、来年縮小する恐れがあると予想し、米国と欧州連合(EU)、中国は失速が続くとの見方を示した。
IMFは来年の世界成長率予想を2.7%とし、7月時点の2.9%や1月時点の3.8%から下方修正。成長率が2%を下回る水準に減速する確率は25%と試算した。
米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めの影響は世界的に波及するとし、新興国通貨に対するドルの上昇はインフレ高進や債務への圧力につながると予想した。
2020年の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による異例の景気減速を除けば、世界金融危機の後の2009年以来最低の成長率になる見通し。
IMFのチーフエコノミスト、ピエールオリビエ・グランシャ氏は序文で「最悪期はこれからだ。2023年はリセッション(景気後退)のように感じる人が多いだろう」と予想。「暗雲が立ちこめる中、政策当局者はしっかりとした手段を続ける必要がある」と述べた。
ワシントンではIMFと世界銀行の年次総会が開幕した。IMFのゲオルギエワ専務理事は10日、米国の借り入れコスト上昇が「影響を及ぼし始めている」と指摘。世銀のマルパス総裁は世界的なリセッションの「現実的危険性」があると警告した。
IMFと世銀のトップ、世界的なリセッションリスクの高まりを警告
IMFは根強い物価圧力の中で中銀による過度の対応よりも過小な対応のリスクが高いと認識している。対応に失敗すれば中銀の信頼性を損ないかねず、物価抑制のための最終的コストは高まる一方になる。
IMF予測では、インフレ率は今年終盤にピークの年率8.8%に達し、従来予想より長期にわたって高止まりする見通し。来年は6.5%にとどまり、24年までには4.1%に鈍化するという。
今年の世界経済については、IMFは3.2%成長と予想し、7月時点から据え置いたが、ウクライナ侵攻前の1月時点の4.4%成長からは下方修正した。プーチン大統領が命じた侵攻により、食糧や燃料の流通が混乱し、世界的にインフレが悪化している。
ユーロ圏経済の23年成長率は0.5%にとどまる見通し。
米国の23年成長率は1%と予想し、前回から据え置き。今年の見通しは7月時点の2.3%から1.6%に下方修正した。
日本の22年成長率予想は1.7%に据え置いた一方、23年は1.6%とした。
先進国の来年の成長率は1.1%に対し、新興国・途上国の成長率は3.7%と予想した。
インドの成長率は来年、世界の主要国で最高の6.1%となる見通し。中国については4.4%成長を見込む。
原題: IMF Warns Worst to Come as Steps to Slow Inflation Raise Risks(抜粋)
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