4月11日、大阪・堺市にある町工場に1通の封筒が届いた。
差出人は、東京電力系の新電力会社「テプコカスタマーサービス」。
電気代を2倍に引き上げる、という内容の通告だった。値上げに応じられなければ、6月末で「解約させていただきます」とも書かれていた。
あまりに唐突な知らせに、誠工プラスチック工業の杉山直大専務(29)は目を疑った。テプコとは、1カ月前に今年度分の契約を交わしたばかりだった。
「値上げをのんだら経営できなくなる。解約しろということか」
受け入れれば電気代は600万円近く負担が増え、年間1200万円の見込みとなる。
「社員をもう1人雇うような金額。耐えられるわけがない」
電力コンサルタント会社に相談すると、いくつかの選択肢が示された。
少しでも安い他の電力会社を探すか。「最後のとりで」であるセーフティーネットの制度に頼る手もある。
だが、どれも大幅な電気代の値上げは免れない。さらなる値上げのリスクも高い。行き着く先は「地獄」しかなかった。
なぜ、わずか1カ月で電気代が2倍に跳ね上がったのか。混乱のさなか、電力コンサル会社の受話器からは「殺す気か」という声が響いていた。
苦しむ中小企業 エアコン使わず、退職金もカット
従業員14人の町工場は、6…
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