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Monday, April 18, 2022

Final Cut Proの「声を分離」がすごい Mac Studioユーザー以外でも使える3つの新機能 - ITmedia NEWS

 Appleは4月22日、Mac Studio用に最適化されたFinal Cut Pro 10.6.2をリリースした。Final Cut Pro(以下FCP)はApple純正の編集ツールということで、毎回新プロセッサにはいち早く対応する。同時に合成ツールのMotionとエンコーダのCompressorもアップデートしている。

 ただそのアップデートは非常に小刻みで、前回のアップデートが2021年11月の10.6.1であった。今回はMac Studio対応が目玉とはいえ、ほぼほぼバグフィックス並みの数字アップである。最適化されたことによる重たい映像クリップの再生や合成といったグラフィックス面が期待できるところだが、実は高速化以外の部分でも有用な新機能が搭載されている。

 筆者はMac Studioユーザーではないが、それでもメリットの大きいと感じる3つの新機能にフォーカスしてみたい。

AIによる音声抽出機能

 今回はサンプルとして、筆者がある意味ライフワークとしている畑仕事の様子をお伝えするVlog「コデラ家のハタケ」というシリーズを収録、という体の素材を用意した。撮影はiPhone 12 miniで、外部マイク等は使用していない。

 iPhoneでの収録の難点は、音声収録が非常に風に弱いというところである。いわゆる「フカレ」に弱いため、多くのVloggerは屋外での音声収録には別途マイクを用意したり、レコーダを別途用意したりと工夫している。ただ、思いついてすぐその場で撮影、という機動性を活かすとなると、やはりiPhone一発撮りといった状況は発生する。

 FCPでは早くから「オーディオ解析機能」が搭載されており、音声に問題がある場合にはアラートが表示されるようになっている。オーディオ解析横のマジックワンドアイコンをクリックすると、「ラウドネス」、「ノイズ除去」、「ハムの除去」といった機能を組み合わせて、問題を自動的にフィックスしてくれる。

 今回の素材では、「ノイズ除去」の部分にアラートが付いている。つまり、音声にノイズが多く入っているという警告である。人の声とそれ以外を分離する方法としては、早くからノイズリダクション系の技術が発達してきた。FCPの「ノイズ除去」もそうした機能の1つだが、永らくアップデートされておらず、クオリティー的には数年前から止まっている。

photo Final Cut Proではオーディオ解析により、問題をフィックスしてくれる機能がある

 これまでもノイズ除去を使って何度も整音してきたが、ノイズレベルは減少するものの、完全に取れるまでには至らなかった。また強くかけると、フランジャーがかかったような音になってしまうため、あまり強くかけられなかった。

 今回音声処理で新たに搭載されたのが、「声を分離」という機能である。上図の「オーディオ補正」のところにある2つめのチェックボックスだ。現在リリースノート以上の詳しい技術情報が得られていないところだが、機械学習によって背景ノイズのレベルを調整し、音声の明瞭度を上げるという。

 従来のノイズリダクションは、ノイズ側を検出して落とす技術だったが、今回は人の声を機械学習させ、それだけを残すという方向である。同様のアプローチとしては、ソニーがこの2月に発売したオープンタイプのイヤフォン「LinkBuds」がある。こちらは5億サンプルを超えるAI学習を行ない、その成果を使って音声だけを抽出する。今後、機械学習による音声の分離は、大きな技術トレンドとなりそうだ。

 FCP上で「声を分離」にチェックを入れると、スライダーが表示される。このスライダーで分離度を調整するだけという、シンプルなUIである。

photo 「声を分離」は量のスライダーを調整するだけ

 では実際に収録したサンプルで効果をチェックしてみたい。最初は収録したそのままの音声、2回目は従来の「ノイズ除去」を100%で適用した状態、3番目が新機能「声を分離」を100%で適用した状態である。

 もともとはかなりiPhoneのマイクが風にフカレており、ボコボコといった大きなノイズが入っている。「ノイズ除去」ではこうしたフカレノイズは除去できないが、「声を分離」ではかなりきれいに除去できているのが分かる。

音声処理の比較

 一方で、フカレによって喋りの音質にまで影響が出ている部分はそのまま残っており、こうした音の変形まで修正されるわけではない。しかしよく聞くと、背景にある車のノイズなども問題にならないレベルで消えている。

 従来は別途プラグインなどを購入して処理しなければならなかったわけだが、純正ツールだけでクリアできるようになったのは大きい。フカレはなるべく手でマイクをカバーするなどして押さえつつ、「声の分離」を使うことで、かなり良好な状態まで持っていくことができるだろう。

重複する部分を素早く把握

 2つ目の機能は、重複部分の表示機能だ。Vlogの撮影では、長回ししたクリップを切り刻んで前後を入れ替えたりすることも多いが、あまり複雑に組み替えをしていると、前で使った箇所を後のほうでもう1回使ってしまったのに気がつかないというミスが起きたりする。

 新バージョンのFCPでは、タイムライン右上にある表示方法の設定のところで「重複する範囲」にチェックを付けると、タイムライン内で2回以上使用している部分を表示してくれる。

photo タイムライン右上で表示変更
photo タイムライン上では、重複した部分が斜線で表示される
photo インデックスビューワ上でも同様に表示される

 これまで、重複した部分を見つけるのは人力しかなかったわけだが、こうして表示されると一目瞭然だ。特に長尺コンテンツを作った場合、重複箇所を探すのは至難の技だったが、この機能を使えば編集ミスも発見しやすくなる。

 また検証動画などで意図的に同一シーンを繰り返し使用した場合も、間違いなく同一シーンなのか、間違って別テイクの映像を使っていないかといった確認にもなる。

iMovieからのマジックムービー/ストーリーボードの読み込み

 Appleは4月14日、iOS/iPadOS用の編集アプリ「iMovie 3.0」をリリースした。テーマに沿ったテンプレートに素材を並べていくだけで、クオリティーの高い動画が制作できる「ストーリーボード」、ライブラリから選択した動画や写真から自動的にベストな映像が制作できる「マジックムービー」が新搭載された。

photo 「iMovie 3.0」で追加された「ストーリーボード」と「マジックムービー」

 どちらの機能も、アクション系カメラに付属の編集ツールにはすでに搭載されていた機能ではあるが、iPhoneで撮影した映像でもこうした機能が利用できるようになったということには、メリットがある。

 FCPの新バージョンでは、新「iMovie 3.0」で使えるようになった「ストーリーボード」と「マジックムービー」のプロジェクトファイルが読み込めるようになった。

 今回は「マジックムービー」でテストしてみよう。使い方は簡単で、ライブラリから使いたい動画と写真を選んで、画面下の「マジックムービーを作成」をタップするだけである。

photo クリップを選んで1タップで動画作成できる「マジックムービー」

 撮影した各カットの中からエエ感じの部分を抜き出してエフェクトでつなぐだけなので、しゃべりの編集などは自動ではやってくれない。短い動画、いわゆるフィラー動画を作ってくれるという機能である。

photo 編集結果は一応エディットもできるが……

 出来上がった動画はオリジナルのプロジェクト形式になっており、カットの入れ替えや使いどころの変更などができる。ただiPhoneの小さい画面でちまちまやっていると、狙った通りにうまくいかないなどイライラするという問題がある。ある意味その問題を見越して、この2つの自動編集をプロジェクトごとMacに渡して編集しよう、というわけである。

 プロジェクトファイルの書き出しは、一旦プロジェクト選択画面まで戻って、書き出し機能を使う。「オプション」部分からビデオかプロジェクトを選択できるので、ここをプロジェクトへ変更する。

photo プロジェクトをAirDropでMacへ転送
photo オプションでビデオからプロジェクトを選択できる

 Mac上ではiMovieのプロジェクトファイルが1つだけ転送されるが、このファイル内にプロジェクトで使用した動画データも含まれている。よって長い動画を含む場合は、プロジェクトファイルがかなり大きくなる。しかしプロジェクトと素材がバラバラになってどこに行ったか分からなくなる心配がないというメリットもある。

 あとはこれをFCPの「読み込む」からロードするだけで、編集済みのタイムラインが展開される。

photo FCPでiMovieの「マジックムービー」プロジェクトを展開

 ただ厳密にまったく同じかというと、細かい部分が違っている。例えば音楽と動画クリップの音量バランスは、iMovieで調整した結果がリセットされてしまっている。またトランジションエフェクトも、種類は合っているが色が違うなど、細かい部分でまだ完全に互換が取れていないところがある。

 それでもiPhoneで撮影してちゃちゃっと編集、アップロードという流れの中に、それでは上手く行かなかった部分のちょっとした補正がMacでできるというのは、実は小さくない話ではないだろうか。特にテロップなどは、iMovieではフォントの扱いがいまいちな部分があるが、Mac上のFCPなら細かく調整できる。

 取材から帰りの電車内でiPhoneでざっくりつないでおき、帰ったらMac Studioで仕上げる、みたいなワークフローも考えられる。すごい勢いでAppleに巻き取られている人みたいな感じだが、巻き取られているからこその、「何も考えなくていい」ワークフローである。

 動画編集は少し前までは、iPhone→iPadという流れだったが、今はiPhone→Macという流れがむしろスタンダードになりつつある。そうした面でも、「純正ツールの強さ」をきちんと把握した上でワークフローを考えた方がコスパが高い。

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