マイナーチェンジを受けた「CX-5」。価格は267万8500円〜(写真:マツダ)
マツダのSUVである「CX-5」が2021年11月に大幅改良を実施した。CX-5は、マツダのグローバル販売の約3分の1、日本市場でも約2割を占める超重要車種だ。
そのメディア向け試乗会に参加し、マツダの開発者などに話を聞くことができた。また、発売後ということもあり、その売れ行きも聞いた。
今回の大幅改良の主な内容は、ヘッドライトを含むフロントまわりのデザイン変更、走行性能と乗り心地の改善だ。特に乗り心地には力を入れている。
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また、特別仕様車の追加にあわせて、一部モデルのドライブモードに4WD用のオフロードモードが用意された。オフロードと呼ぶが、実際のところ日本では主に雪道で使うモードとなる。
試乗してみれば、たしかに段差を越えたときのショックの大きさや収まり、荒れた路面で感じる振動などが緩和されていた。正直、改良は小さなものだけれど、主力商品だからこそ、こうしたコツコツとした性能向上が重要なのだろう。
全7タイプは装備よりキャラクターを重視
特別仕様車として、“大人のスポーティ”を提供する「スポーツアピアランス」、アウトドアユーザー向けの「フィールドジャーニー」を追加したのも新しい。おもしろいのは、CX-5のモデル編成が、“装備の充実度”よりも“キャラクター重視”になっていることだ。並べてみれば以下のようになる。
■シンプルな内容で安価な「スマートエディション」
■バランスのいい基本グレード「プロアクティブ」
■装備を充実させた上級の「Lパッケージ」
■スタイリッシュな「ブラックトーンエディション」
■アウトドアテイストの「フィールドジャーニー」
■スポーティ度を高めた「スポーツアピアランス」
■もっとも豪華な「エクスクルーシブモード」
キャラクターの違いはもちろんだが、ここで注目したいのが、それぞれのタイプで「購入層の世代が違う」ということだ。
20〜30代の若い世代に人気なのは「ブラックトーンエディション」、30〜40代の人気は「フィールドジャーニー」、40〜50代は「スポーツアピアランス」、そして50〜60代が「エクスクルーシブモード」。どれも、特有世代が販売の半数ほどを占めるという。
女性比率は、「ブラックトーンエディション」がトップで約14%。「フィールドジャーニー」は7%、「スポーツアピアランス」は8%で、トップと大きな差を付ける。
また、CX-5全体として売れているのは「ブラックトーンエディション」がトップで23%、続いて「スポーツアピアランス」の20%、「エクスクルーシブモード」の19%と続くという。
まとめると、「CX-5でもっと売れているのがブラックトーンエディションで、その約半数(53%)が20〜30代。女性人気も高い」ということだ。“若者のクルマ離れ”が問題になって久しいが、そうした中でもCX-5は若い世代に、それなりに支持されていると言える。
派手ではなくても細部を仕上げたバランスのよさ
では、若者と女性に人気のブラックトーンエディションは、どのような内容なのだろうか。まず、目を引くのは名前の通りの精悍なルックスだ。
ブラックトーンエディション。パワートレインはガソリンとディーゼルから選択できる(写真:マツダ)
グリル下の左右に伸びるメッキ部分(マツダは「シグネチャーウイング」と呼ぶ)は、ブラッククロームに。19インチの大径ホイールもブラックメタリックで、ミラーもブラック仕上げだ。
シートもブラックの合成皮革になっており、室内各所の装飾もブラックやクロームで統一されている。ド派手ではないけれど、細部をきっちりと仕上げた仕様だといえる。
シートはグランリュクス®(ブラック)+合成皮革(ブラック)(写真:マツダ)
機能面はミドルグレードのプロアクティブと同等で、価格はプロアクティブよりも14万円ほど高い。しかし、19インチアルミホイール代とブラック加飾代金と思えば、約14万円の価格差はむしろバーゲンプライスだろう。価格帯としては、数あるグレードの中でも“真ん中よりもやや下”という位置づけだ。
「価格と装備のバランスがよいというところ、やりすぎじゃないところが、若い人に受けているのではないでしょうか」とマツダの国内営業本部は説明する。
つまり、“格好はいいけれど価格は手ごろ”というモデルが「ブラックトーンエディション」だということ。そして、それを若い世代や女性が選んでいるのである。
ここで思い出すのが、やはり若い人に人気があると聞いた「ロードスター」だ。2021年は、購入者のうち30代未満のユーザーが15%から30%へと倍増したという。そのためロードスター全体の購入平均年齢が5歳も若返って、46歳になったというのだ。
マツダの国内営業本部は「990Sの記事を見て、興味を抱いてディーラーに足を向けた方が多かったようです。ただし、若い方が結果的に購入するのは、装備のより充実したSパッケージになっています」と説明する。
ちなみに、若者が興味を持つきっかけとなった「990S」とは、秋にファンイベントでその存在を知られるようになった新しいグレードだ。
新しく追加されたロードスター「990S」(写真:マツダ)
ロードスターの楽しさの根源となる「軽量さ」を磨き込んでいる。走るための装備は充実しているが、カーナビなどの快適装備は省略。“ロードスターの本質に迫るモデル”として、マニアックなユーザーから注目を集めている。
「本質を見抜く力」を持つ今の若者たち
若い世代に支持されているのは、マツダ車だけではない。2021年の夏に導入されたホンダの新型「シビック」も、「若い世代からしっかりと支持を得ている」とホンダは説明する。
新世代のシビックは若い世代をターゲットとしながらも、319万円からと価格は少々高めだ。「若者向けに、そんな高くしても大丈夫なのか?」と、シビック開発者に聞けば「今の若い世代は本質を見抜く力がある。ちゃんとしたものであれば、値段は関係ない」と言う。
新型「シビック」は319万円〜353万9800円で、CVTと6速MTが選択できる(写真:本田技研工業)
たしかに、新しいシビックは楽しい走りがあり、内外装のデザインも洗練されていた。そうしたデキのよさを若者は理解したうえで300万円台の高価なクルマを買うのだ。
とはいえ、昭和の時代にあった「一番高いものが一番いいから、一番高いものを買う」というスタイルではない。CX-5やロードスターでいえば、もっと装備の充実した高価なグレードもあるけれど、若い世代が購入しているのは、価格と内容のバランスのいいグレードだ。
若い世代は品質や性能だけでなく、価格面でもしっかりと“良い/悪い”を判断できるのだろう。目の肥えた顧客ということだ。特に今は、ネットという集合知を利用することもできる。それが今どきの若い世代なのではないだろうか。売るほうは大変だ。
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