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Thursday, January 6, 2022

メガネ、クルマ、チップ――CES 2022の見どころを振り返ってみた - ITmedia

 経歴だけは長いベテラン記者・編集者の松尾(マツ)と、幾つものテック系編集部を渡り歩いてきた山川(ヤマー)が、ネット用語、テクノロジー用語で知らないことをお互い聞きあったり調べたりしながら成長していくコーナー。交代で執筆します。

ヤマー 新年あけましておめでとうございます!

マツ 今年(2022年)もよろしくお願いします! なんと、シンギュラリティーと言われている年まであとたった23年ですよ……。

ヤマー 確かに……? でも2045年にシンギュラリティーが来るって話はどこから広まったんですかね?

マツ レイ・カーツワイル博士の話からですね。論文、書籍、映画にもなりました。映画もけっこう面白かったですよ。

ヤマー 結構メディアミックス展開してるんですね。

マツ ちゃんとストーリーもあるやつなので、機会があったら見るといいですよ。

ヤマー 見てみます。そんな2045年まで残り23年となった2022年ですが、この業界だと年明けは新ネタの宝庫なんですよね。

マツ 2022年最初のイベントが行われましたので、その話題で行きますか。

ヤマー ということで、今回は米国で開催されているCESで気になったものを紹介しようかと。

マツ CES 2022。毎年1月に米ネバダ州ラスベガスで行われているのですが、今回は現地取材を断念する人も多く、リアル展示を取りやめた企業もいくつかありました。ただ、発表自体はあったので、トピックとしてはそれほど不足感はないですね。

ヤマー 2021年はオンライン開催で、2022年は久しぶりのリアル開催だったんですが、LenovoとかIntelとか直前で出展を取りやめた会社も多かったです(代わりにオンライン開催に)。

ヤマー 西田さんの記事にもありますが、大企業は注目を集められるのでオンラインでも新情報を発表できますが、リアル会場はスタートアップのお披露目の場としての役割もありますしね。

マツ そうですね。以前からスタートアップとしてCESで足場を固めてきた日本企業に、Cerevoがあります。

ヤマー 日本を代表するハードウェアスタートアップですよね。

Shiftallのちょっと変わったVRデバイス群

マツ 日本のハードウェアスタートアップの草分け的存在ですね。そのCerevoから枝分かれし、パナソニックの傘下となったShiftallの岩佐琢磨社長がまた面白いものを出していました。

ヤマー 「MeganeX」(メガーヌエックス)ですね。デザインが攻殻機動隊のバトーをほうふつとさせる(笑)。

photo MeganeX

マツ ですね。普通に装着して歩き回りたい。「素子ー! どこだー!」って叫びながら。

ヤマー 前見えないですよ。

マツ これはVRデバイスで、パススルー機能は用意されてないんですよね。

ヤマー 確かないかと。MeganeXはパナソニックと共同開発したハイエンドHMDで、SteamVRに対応してるとか。

マツ 面白いのは、これがほぼVRChat用だというところ。

ヤマー そんなわけないでしょう(笑)。

マツ もちろん他の用途でも使えるんだけど、長時間の装着に耐えられるように作られている。「年間2000時間以上メタバース内で過ごすといわれるヘビーユーザーにも快適なプレイ環境を提供します」と、250gという軽さを売りにしていますね。

ヤマー SteamVRのゲームコンテンツが長時間遊べるってことですよね。それは魅力的です。というか、岩佐さんVRCガチ勢ですもんね。

マツ ガチ勢向けの、ここまで尖った製品を出してくるのはすごいです。

ヤマー Shiftall、今回Megane X以外にもマイクデバイスなども出してますけど、共同通信の記事の岩佐さんが強烈過ぎて。

マツ 音漏れ防止機能が付いたBluetoothマイク「mutalk」(ミュートーク)ですね。

photo mutalk

マツ こういうの、以前買おうと思ったことがあったんですよ。

ヤマー 他にも類似製品あるんですか?

マツ こんなのが山のようにあって。

photo

マツ 便所掃除に使うものに似てますけど、単に音が漏れないようにするという。

ヤマー 自宅でカラオケ用とかでニーズあるんですね。

マツ はい。10年以上前からあったかと。でも、mutalkはそれにちゃんとテレワーク用途向け機能を搭載しているのが新しい。口カセのように装着するので見た目はどうしても北斗の拳とかマッドマックスに出てくる悪役にしか見えないんですけど。これが竹筒だったらまた違うものに。

 家に1人でいれば不要ですけど、家族がいたり、シェアオフィスとかだと必要になるんですかね。

ヤマー VRだと両手はコントローラーですし、声漏れを少なくしつつクリアな声を拾いたいってなるとあの形になるんでしょうね。

マツ 音質が良いなら買ってもいい気はします。2万円前後ですし。もう1つの「Pebble Feel」も同じくらいの値段ですが、これは早く出てほしい。

ヤマー Pebble FeelはVR連動の温冷感デバイスですよね。

マツ Pebble Feelはペルチェ素子を使ったもので、小寺信良さんが2021年によかったものとして挙げていたソニーの「REON」と同じタイプですね。

photo Pebble Feel

マツ VRとの連動が新しいけど、普通に冷暖房に使える。

ヤマー リアル世界でも使いたいと。

マツ むしろリアル世界で。VRでは対応しているワールドでないといけないしね。

ヤマー どっちでも使えるって意味では魅力的ですね。

SIE「PlayStation VR2」ってどうよ

ヤマー VR関連だと、ソニーでも発表がありましたね。

マツ はい。これは本命的製品。すでに予告はされていましたが、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SIE)の「PlayStation VR2」。

ヤマー PS5のハイパフォーマンスをVRで生かすと。Quest 2のようなスタンドアロン製品が一番便利ですけど、画質やパフォーマンスを求めると今はコストの掛かるPCVRしか選択肢がありませんからね。

マツ じゃあそれだけのCPU、GPUパワーを持っていて低価格なプラットフォームって何よっていったらPS5だという。ある意味大正解の組み合わせですが、PS4とPS VRの時には外部ユニットが必要だったり、HDMIケーブルを複雑につなげなくちゃいけなくて大変でした。

ヤマー ほんとそれなんですよ。初代PS VRの配線ホント複雑で。プロセッシングユニット、カメラユニット、それぞれの電源、接続するケーブル数とかどれだけ準備が必要か……。

 ちょうどいいとこ取りな存在だと思います。もちろんPCみたいな自由度はないでしょうが、手軽にハイパフォーマンスを得られるのはコンソール機のメリットですね。

マツ いちおうPS5対応させる変換アダプターが無償で提供されて、自分も送ってもらったんだけど、つなげるのが面倒でまだやってないという。

ヤマー PS5用のPSVRアダプターなんてあったんですね。PSVR2はUSB Type-Cケーブル1本だけで完結するんですよね?

マツ はい。そんなPS VR2ですが、2022年以降に発売と予告されていて、まさにその通りになったという。

ヤマー このときはまだ正式なネーミングは出てなかったんですね。

マツ ですね。正式発表の記事がこちら。

photo PS VR2タイトル「Horizon Call of the Mountain」の画像

ヤマー 片目で2KなのでQuest 2より上ですね。片目当たりの解像度は2000×2040ピクセル、フレームレートは90/120Hz。視野角は110度。

マツ ポイントは視線検知ですかね。「特定の方向を見ただけで、ゲームキャラクターを操作することもできます」とあります。

ヤマー おお、視線検知とは「FOVE」を思い出します。

マツ FOVEは視線検知を売りにしたSteamVR対応HMDですが、現在もがんばっているようです。ソニーは2021年12月に開催されたイベントで片目4KのVRデバイスを披露してましたけど、解像度はそこまで高くはない。もっとも、その解像度だと描画が追いつかないので、現実解としてはこのくらいということになるんでしょうね。

ヤマー そうなんでしょうね。あとは、片目4Kパネルの量産が可能かどうか、PlayStation製品として出す時のコスト感が合うか辺りで2000ピクセルになったのかなと。PS VR3に期待したいところ……!

マツ そのときの母艦はPS5 Proですかね。

ヤマー PS5が出てちょっと時間が経っているタイミングでのPS VR2なので、PS5 Pro(がもし出るとしても)の時はPS VR2が最新だと思います。

ソニー、まさかのEV市場に参入宣言

ヤマー さて、そんなソニーですがもう1つ大きな発表がありました。EV市場に参入!

マツ やっぱりやるんかい!

ヤマー 2年前(CES 2020)は市販しないと言っていたのに(笑)。

マツ 参入しないといったがあれはうそだ。

ヤマー しかし、IT大手のEV参入がうわさされる中で、ソニーが先行したってのは結構衝撃的ですよね。

マツ プレイヤーが増えるのはいいことですし、その意味ではTeslaだって何もなかったところから作ったわけですし。今回はSUVタイプも発表ですか。

ヤマー 結構デザイン好きです。既存の自動車に寄せすぎているって声も聞こえますが。

photo VISION-S 02

 CES 2020のときは、センサーとエンタメをプッシュして車メーカーへのデモ用として試作したと聞いてて、プロトタイプの「VISION-S」にはBOSCHなどの部品メーカーや、マグナシュタイアーなどの自動車製造メーカーなど協力会社も多かった印象です。ソニーが自らクルマを作る狙いが気になるところですね。

マツ ソニーらしさとしては、車内エンターテインメントに力を入れて、360 Reality Audio(ソニーが提唱する3Dオーディオ技術)を導入したりというところでしょうか。

ヤマー もしや、車内でPS5の「グランツーリスモ」がプレイできたり……? VISON-S内でバーチャルのVISION-Sをドライブするとか、PS5のコントローラーでリアルのVISION-Sを運転できたり……?

マツ リアルとバーチャルが一体化。これは新しいですぞ!

 以前、友人たちとドライビングゲーム環境のために動かない実車を買ったらどうかって話を以前してたんですけど(笑)。VISION-SってLiDARとカメラついてるじゃないですか。これで完璧な360映像が撮れますね。最も高価なα。

ヤマー 自走するα。

マツ これはもう、ヤマーは買わないと。きっとソニードローン「Airpeak」のローンチパッドにもなりますよ。陸と空を制覇するカメラ。

ヤマー Airpeakだけで100万するんですが。レンズは交換できますかね……?

NVIDIA、AMD、Intel、Qualcomm

ヤマー VISION-SにはNVIDIAのチップが積まれてますので、NVIDIAに話を移しましょうか。

マツ はいはい。「革ジャン」ことジェンスン・フアンCEO、今回は本物でした?

ヤマー 今回、フアンCEO登場していないんですよ。

 今回NVIDIAは、レイトレのエントリーモデルに「RTX 3050」を、頂点に君臨する「RTX 3090 Ti」を発表しました。また、ノートPC用に「RTX 3080 Ti」「RTX 3070 Ti」も追加してて、3080Tiはデスクトップ用の「TITAN RTX」よりも高速とアピールしてます。

マツ 上と下に広げて盤石の体制を敷いてますね。アベイラビリティー(入手性)はどうでしょうか。

ヤマー 問題はそこですよね。

マツ グラボはあるときに買っておけってのはあるので、チャンスかもです。

ヤマー 半導体不足とPCゲーム市場の盛り上がり、マイニングニーズは続いてますからね。

マツ はい。先に紹介したShiftallのMeganeXもディスクリートGPU前提ですからね。ソフト方面では「Omniverse」を個人向けに無償提供始めるという発表がありました。

ヤマー NVIDIAのメタバース作成環境でしたっけ。

マツ クラウドでコラボレーションできて、アセットを共有しようというものですね。そのためのエコシステム拡大を狙っているようです。アセットの前提がRTXベースになればもうしめたものなので。

 3DライブラリにPixarのUSDを採用してますが、USDをベースにしたUSDZをAppleがAR用の3Dフォーマットとして推進しているという関係も面白いですね。一方で、Epic GamesのMetahumanとも連携するというし。

ヤマー なるほど。RTX前提なのでVR空間のグラフィックも高度なものにできるでしょうね。

マツ そのためのロックトイン作戦ですね。で、ライバルのAMDは?

ヤマー NVIDIAの競合だとRadeonシリーズのAMDが薄型ゲーミングノートPC用にGPU「Radeon RX 6000S」シリーズを発表したのと、CPUでは、新アーキテクチャの「Zen4」を積んだ「Ryzen 7000」シリーズが登場。もう7000シリーズ。

 これに加えて、CPUとGPUが一体化したAPU「Ryzen 6000」シリーズもお披露目になりました。ようやくGPUのアーキテクチャが「Vega」からPS5やXboxに採用されている「RDNA2」ベースに。内蔵GPUを積んだノートPCでもそこそこのグラフィックを扱えるようになるかもです。

マツ PS5クラスのパワーがぼくらのノートPCにって感じですね。

ヤマー ただ、帯域幅がめちゃ広いGDDR6を積んでるPS5などと違って、GPUのVRAMはメインメモリ共有なのと、コンピュートユニット数が全く違うので、PS5のパフォーマンスには到底及ばないのですが。

 それでも安いノートPCでもプレイできる3Dゲームは増えるかなと。全体の底上げになるので大歓迎です。

マツ VRの世界にも入りやすくなりますし。

ヤマー そして、AMDの競合といえばIntelなんですが、こっちはハイパフォーマンスGPU「Intel Arc」の出荷を開始してNVIDIAもライバルに。DELLのAlienwareなど、50のメーカーから搭載PCが発売されるようですね。群雄割拠だなぁ……。

マツ リアルタイムレイトレーシングもサポートするハイエンドまでカバーしてるんですよね。日本での価格次第では市場シェアで大波乱あるかも?

ヤマー 結構力入れてるみたいですね。「Xe SS」というAIを使ったアップスケーリング機能も搭載してて、「Death Stranding Director's Cut」が対応をアナウンスしてます。

 ただ、製造がIntelの自社ファブじゃなくてTSMCの6nmラインを使うので、どれだけ市場に出回るかも鍵になるかなと。TSMCの先端ラインはAppleやAMDもお世話になってるので、Intelがどれだけラインを確保できるかが出荷量にも影響するかなと。

マツ そこはパット・ゲルシンガーCEOの交渉力でなんとかしてくれると面白いと思います。

ヤマー そういえば、12月にゲルシンガーCEOが訪台してますね。TSMCの役員に面会したと見られてますが。

マツ そして、もう1つのプロセッサプレイヤーも発表ありましたね。

ヤマー Qualcommですね。MicrosoftとARグラス用のチップで提携を発表しました。あとは、ホンダやボルボ、ルノーと提携してデジタルプラットフォーム「Snapdragon Digital Chassis」の普及でも合意に。

マツ Android、Windows、モビリティも全てスナドラで。Microsoftとの提携のプレスリリースでは、ARチップでメタバースって言ってますが、VRではなくて、ARなんですよね。

ヤマー ARだと、GoogleやNianticと同じ考え方ですかね。MicrosoftのHoloLensはMR(Mixed Reality)ですけど、ARの延長線上にある概念ですしね。

マツ Microsoft Meshと統合するって言っているので、そういうことなんでしょうね。

ヤマー すでにHololens2ではSnapdragon 850が使われてますし、両社のARビジョンが楽しみな提携だなって思います。

マツ というわけで、今日のCESまとめはメガネに始まりメガネに終わる感じですか。

ヤマー われわれのピックアップしてるネタがメガネに偏っている説もなくはないですが。

マツ 偏向レンズですね分かります。

ヤマー だれうま。

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