石油産業への投資不足を悪化させる「緑の圧力」
2021.11.6(土) 藤 和彦
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格はこのところ7年ぶりの高値(1バレル=80~85ドル前後)で推移している。OPECとロシアなどの非OPEC産油国で構成するOPECプラスが協調減産を続けていることで、経済協力開発機構(OECD)加盟国の8月時点の原油在庫は過去5年平均を大幅に下回り、需要期の冬場を前に逼迫の懸念が警戒され始めている。
在庫の減少が特に意識されているのが米国だ。米国全体の在庫はこのところ増加基調にあるが、WTI原油の受け渡し拠点のオクラホマ州クッシングの原油在庫は3年ぶりの低水準となった。昨年(2020年)4月にWTI原油の在庫を持てあましたトレーダーたちが投げ売りをしたことで価格が一時マイナスになるという異常事態が発生したが、今は様変わりの状況だ。今年初めに6100万バレルあった在庫が半分以下に減少しており、「このままのペースで行けば、あと2カ月で在庫が底をついてしまう」との懸念が生じている。
世界最大の原油消費国である米国の石油製品需要は日量約2000万バレルと強く、原油価格が1バレル=80ドルを超えても需要が圧迫される兆候が見られない。
投資縮小で伸び悩む原油供給
需要とは対照的に供給は伸び悩んでいる。米国の直近の原油生産量は日量1150万バレルとコロナ禍以前のピークよりも約150万バレル少ない状態が続いている。石油掘削装置(リグ)稼働数が増加基調にある(約440基)ものの、コロナ禍以前の水準(約700基)にはほど遠い。
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