新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県内の子ども食堂が、みんなでわいわいご飯を食べる従来のスタイルを改め、弁当や食材を配るなど工夫を凝らして活動を続けている。子どものおなかを満たし地域とつなぐ場を絶やさないため、試行錯誤が続く。(石原真樹)
「来てくれて、ありがとう。アメも持っていってね」。横浜市泉区で「みやまえ食堂」を開いているNPO法人宮ノマエストロは五月三十一日、予約制で、受け取る時間帯を三回に分けるなど人が集まりすぎないよう工夫し、二時間かけて弁当二百食を配った。「本当なら三十分でできるけれど、感染防止に気を付けた。密になることなく終えられた」。高橋裕子代表理事(64)はほっとした表情を浮かべた。
月に二回開いていた食堂は三月に中止。弁当配布のほか、近隣の農家で購入した野菜などを配る「フードパントリー」に取り組む。取りに来た子が「ご飯食べていないんだ」とつぶやいたことがあり、高橋さんは新型コロナで仕事を失った人もいるかもしれないと実感したという。「一緒にご飯を食べるのは当分無理かもしれないけれど、できる形でつながり続けたい」
ひとり親世帯の支援に力を入れる「金沢子ども食堂すくすく」(同市金沢区)は三月から、食材を箱に詰めて家庭に届ける活動に切り替えた。
玄関先で母親らと話す中で、仕事を失うことへの不安や「おむつが買えない」といった悩みを打ち明けられた。箱からお菓子や折り紙を見つけた子どもが「季節外れのサンタさんが来たみたい」と喜んだという話も聞いた。加々美マリ子代表(62)は「届けたのはモノではなく、心だった。一瞬でも笑顔になってくれたら」と話す。
神奈川こども食堂・地域食堂ネットワーク世話人の米田佐知子さん(53)によると、県内の子ども食堂は約二百五十カ所(昨年五月時点)。新型コロナの影響が拡大する中、同ネットはオンライン交流会を開いて情報交換を続けてきた。助成金を活用して売り上げが落ち込んだ地元の飲食店で調達した弁当を配る団体や、心配な子にだけ食事の提供を続ける団体がある一方、活動の場だった公共施設の休館や食堂での感染拡大を懸念して活動を中止している団体も多いという。
米田さんは「人が集まることが難しい中で、それでも子ども食堂を必要とする人のために取り組みを続けたい。活動中止に後ろめたさを感じ悩むメンバーもいる。コロナをどう乗り越えるのか、みんなで考えたい」と話す。
問い合わせは同ネットのホームページ=https://kanasyoku-kodomo-tiiki.jimdofree.com/=へ。
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