ここ数年、手のひらサイズの小型デスクトップPCが各社から発売されている。それぞれ順調に新機種が投入されていることを見ると、一時期の流行というわけではなく、デスクトップPCの1つのスタイルとしてユーザーに受け入れられたと考えてもよいのではないだろうか。
こうした背景を踏まえ、2021年12月には「注目の「小型PC」5機種を一斉比較!サイズ感・性能・消費電力など知りたい特長が丸分かり」と題し、Intelでは第11世代Coreシリーズ、AMDではRyzen 5000シリーズなどを搭載した小型PCを細かく検証している。 しかし最新の小型PCではCPUの世代がさらに進んでおり、性能も大きく向上しているはずだ。
そこで今回もまた、各社が販売中の最新小型PCを5台集めて細かく検証してみた。先ほど述べたCPUの世代交代による性能向上はもちろん、サイズ感、インターフェイス、拡張性など、さまざまな面でさらに使いやすくなっているのが最新の小型PCなのだ。
搭載CPUのバリエーションも豊かな5台の最新小型PC
ともあれ小型PCを販売するメーカーも増えており、どれを選ぶかがなかなか難しい状況ではある。今回は入手性のよさと搭載CPUの世代の新しさ、そして機能性や注目度を考慮し、5モデルを選択した。
MINISFORUMとBeelinkから2モデルずつ選択することになってしまったが、どちらも小型PCに非常に積極的なメーカーであり、ある意味では当然の結果だ。
Beelinkの「EQ12」
トップバッターはBeelinkの「EQ12」で、CPUには「Intel Processor N100」を搭載する。これは第12/13世代Coreシリーズに搭載されている「Efficient Core」(高効率コア、Eコア)4基分のみを切り出して単体のCPUとして利用するものだ。
Eコアは、省電力だが性能面ではあまり期待できないCPU「Atom」シリーズの流れを汲むコアである。
とは言え、第12/13世代Coreシリーズでマルチスレッド性能を向上するための要として大きく貢献したこともあり、単体で利用した場合の性能が気になるユーザーは多いだろう。試用したのはDDR5メモリを16GB、500GBのNVMe対応SSDを搭載するモデルで、Amazonでの価格は3万8,800円くらいだが、よく割引もされている。
Beelink「SER6 Pro 7735HS」
同じくBeelinkからは、「Ryzen 7 7735HS」をCPUとして搭載する「SER6 Pro 7735HS」を取り上げる。Ryzen 7 7735HSは、CPUコアに「Zen 3+」、GPUコアに「RDNA2」世代を組み合わせたもので、7000シリーズに含まれてはいるが実質的には1つ世代が古い「Ryzen 6000」世代のCPUと言ってよい。
とは言え、CPUコア部分は8コア16スレッド対応、GPUコアも現行のCPU内蔵GPUの中で比較すればかなり性能が高い。設定次第ではPCゲームのプレイも可能、というのは以前行なったレビューでも紹介したとおりだ。
試用したのは32GBのDDR5メモリに500GBのNVMe対応SSDを搭載したモデルで、Amazonでの価格は9万4,800円。
Intel「NUC 13 Pro」
Intelからは、つい先日発売されたばかりの最新第13世代Coreシリーズを搭載する「NUC 13 Pro」を取り上げる。このシリーズでは搭載CPUや筐体の違いなどでいくつかバリエーションを用意しているが、今回はCPUに「Core i7-1360P」を搭載し、薄型の筐体を採用するモデルを試用した。
Core i7-1360Pは、性能重視のモバイルノートで採用されることを想定したCPUで、Performanceコア(高性能コア、Pコア)を4基、Eコアを8基で12コア16スレッドに対応する。
PCパーツショップなどで購入できるメモリやSSD、OSがないベアボーンPCの実売価格は、10万円前後。今回は32GBのDDR4メモリと512GBのNVMe対応SSDを組み込み、Windows 11 Professionalをインストールしたモデルを借用してテストした。
MINISFORUM「Neptune HX99G」
MINISFORUMの「Neptune HX99G」は、CPUは「Ryzen 9 6900HX」を搭載するほか、ディスクリートGPUとしてノートPC用の「Radeon RX 6600M」を採用する高性能な小型PCである。ほかの小型PCと比べるとやや筐体は大きめではあるが、GPUを搭載して発熱が増えていることを考えると妥当なところだ。
外部GPUを搭載するため、ほかの4モデルと比べると3Dグラフィックス性能は圧倒的に高い。特にゲーム時の性能が大いに気になるところだろう。今回は16GBのDDR5メモリ、そして512GBのNVMe対応SSDを搭載したモデルを試用した。直販価格は16万6,800円だ。
MINISFORUM「Venus NAB6」
最後に紹介するMINISFORUMの「Venus NAB6」では、第12世代Coreシリーズ「Core i7-12650H」をCPUとして採用する。最新の13世代Coreシリーズではないが、高性能なゲーミングノートPCなどで利用されることが多いCPUで、6基のPコアと4基のEコアを搭載し16スレッドに対応する。性能に影響しやすいPコアの数だけを比べれば、NUC 13 Proが搭載するCore i7-1360Pよりも多い。
銅製ヒートパイプを利用した高性能な冷却システムを搭載しており、高性能だが発熱の大きなCPUをしっかりと冷却できる。また天板を簡単に着脱できるため、内部のメモリスロットやM.2スロットにアクセスしやすい。
今回試用したのは、32GBのDDR4メモリと512GBのNVMe対応SSDを搭載したモデルで、実売価格は9万9,980円だ。
以前よりかなり小さくなり、搭載インターフェイスは強力に
まずはサイズを比較してみよう。一部のモデルではinch表記だったのでcm表記に変更している。またNeptune HX99Gでは縦置きで利用するスタンドを同梱しているが、横起きでも利用できる。ほかのモデルと同様、ここではスタンドを利用しない横起き状態のサイズで比較している。
幅 | 奥行き | 高さ | 容積 | |
---|---|---|---|---|
Beelink EQ12 | 12.4cm | 11.3cm | 3.9cm | 546平方cm |
Beelink SER6 Pro 7735HS | 12.6cm | 11.3cm | 4.2cm | 598平方cm |
Intel NUC 13 Pro NUC13ANKi7 | 11.7cm | 11.2cm | 3.7cm | 485平方cm |
MINISFORUM Neptune HX99G | 20.5cm | 20.3cm | 6.93cm | 2,884平方cm |
MINISFORUM Venus NAB6 | 12.7cm | 12.75cm | 5.47cm | 886平方cm |
もっともコンパクトなのは、容積が約485平方cmのNUC 13 Proだった。幅・奥行き・高さのいずれも今回取り上げた5モデルの中ではもっとも小さく、文句なしの結果だ。ただEQ12やSER6 Pro 7735HS、Venus NAB6も、感覚的にはほぼ同じようなサイズ感だ。
2021年12月の第1回目に取り上げた5モデルでは、容積が1,000~2,000平方cm(1~2L)に達するモデルが主流だったことを考えると、ここ数年で小型PCのサイズはさらに小さくなったことが分かる。
次に装備する主なインターフェイスの状況を比較してみよう。まずはディスプレイ出力端子をまとめたのが下の表だ。今回取り上げた5モデルではそう大きな違いはなく、3基のEQ12とSER6 Proを除いてすべて4基のディスプレイ出力端子を装備している。
HDMI | DisplayPort | Type-C | |
---|---|---|---|
Beelink EQ12 | 2 | - | 1 |
Beelink SER6 Pro 7735HS | 1 | 1 | 1 |
Intel NUC 13 Pro NUC13ANKi7 | 2 | - | 2 |
MINISFORUM Neptune HX99G | 2 | - | 2 |
MINISFORUM Venus NAB6 | 2 | - | 2 |
どのモデルでもDisplayPort Alt Modeに対応したType-Cを装備しており、映像入力端子としてType-Cを装備する最近の液晶ディスプレイと組み合わせやすいことが分かる。またすべてのモデルでリフレッシュレート60Hzで4K解像度の出力に対応しており、4Kディスプレイを複数台接続したマルチディスプレイ環境の構築も容易だ。
周辺機器と接続するUSBポートやThunderbolt 4については、搭載CPUのグレードが低いEQ12を除き、高速なUSB 3.2/4.0、Thunderbolt 4ポートの搭載が進んでいる。
こうした高速なUSBポートの数で比較する場合は、Type-AのUSB 3.2ポートを4基、Type-CのUSB 3.2ポートを2基で合計6基搭載するVenus NAB6が若干有利。より高速なThunderbolt 4や40Gbpsと高速なUSBポートが欲しい場合は、SER6 Pro 7735HSやNUC 13 Pro、Neptune HX99Gを選ぼう。
USB 2.0 | USB 3.1 | USB 3.2 | Type-C | |
---|---|---|---|---|
Beelink EQ12 | - | 3 | - | USB3.1×1 |
Beelink SER6 Pro 7735HS | 1 | 3 | - | USB 3.1×1、USB 4.0×1 |
Intel NUC 13 Pro NUC13ANKi7 | 1 | - | 3 | Thunderbolt 4×2 |
MINISFORUM Neptune HX99G | - | 3 | 1 | USB 3.1×1、USB 4.0×2 |
MINISFORUM Venus NAB6 | - | 4 | USB 3.1×1、USB3.2×2 |
有線LANポートについては、何とすべてのモデルで2.5Gigabit Ethernetに対応していた。数年前はGigabit Ethernet対応モデルも多かったことを考えると、状況は大きく変わっている。ポート数が多いのはEQ12とVenus NAB6で2基、残りの3モデルは1基。またすべてのモデルでWi-Fi 6に対応しており、ネットワークを通じて高速にファイルをやり取りできる。
Gigabit Ethernet | 2.5Gigabit Ethernet | |
---|---|---|
Beelink EQ12 | - | 2 |
Beelink SER6 Pro 7735HS | - | 1 |
Intel NUC 13 Pro NUC13ANKi7 | - | 1 |
MINISFORUM Neptune HX99G | - | 1 |
MINISFORUM Venus NAB6 | - | 2 |
付属するACアダプタのサイズがもっとも小さいのは、EQ12だった。ほかのモデルが本体に近いサイズ感のACアダプタを用意するのに対し、EQ12ではスマートホンに付属する充電器に近いサイズ感だった。とは言え今回取り上げたモデルはいずれも高性能なモデルなので、ACアダプタが大きめなものになるのは仕方ない。
GPU搭載のNeptune HX99Gがダントツ、SER6 Pro 7735HSも健闘
ここからは性能比較を行なう。Neptune HX99G以外はCPU内蔵GPUを利用する構成であり、基本的にはCPUの世代や搭載コア/スレッド数、内蔵GPUの性能が大きく関わってくる。また高性能なGPUを内蔵するモデルもあるので、今回はいくつかPCゲームのベンチマークテストも行なってみたい。
CPU | GPU | |
---|---|---|
Beelink EQ12 | Intel Processor N100 (4コア4スレッド) |
UHD Graphics |
Beelink SER6 Pro 7735HS | Ryzen 7 7735HS (8コア16スレッド) |
Radeon 680M |
Intel NUC 13 Pro NUC13ANKi7 | Core i7-1360P (12コア16スレッド) |
Iris Xe Graphics |
MINISFORUM Neptune HX99G | Ryzen 9 6900HX (8コア16スレッド) |
Radeon RX 6600M |
MINISFORUM Venus NAB6 | Core i7-12650H (10コア16スレッド) |
UHD Graphics |
デル XPS 13 Plus | Core i5-1240P (12コア16スレッド) |
Iris Xe Graphics |
また、「PCMark 10」や「3DMark」、動画エンコードテストといった基本的なテストについては、第12世代Coreシリーズの「Core i5-1240P」を搭載するデルの「XPS 13 plus」の結果も併記した。Core i5-1240Pは、非常に多くの現行モバイルノートに搭載されているCPUであり、こうしたノートPCとの違いが分かる。
まずはよく利用されるアプリの使用感をScoreとして計測できるPCMark 10の結果を比較してみよう。実行したのは「PCMark 10 Extended」で、Scoreが高いほうが性能が高い。なお普段はすべての項目のScoreを紹介しているが、今回は検証台数が多いため総合Scoreのみを抜き出して比較する。
抜きん出て優れているのはNeptune HX99G。グラフィックス処理にCPU内蔵GPUを利用せず、外部GPUを搭載するモデルなので当然と言えば当然の結果だ。
外部GPUを搭載しない4モデルの中では、SER6 Pro 7735HSが頭1つ抜けたScoreを示した。今まで検証してきた小型PCやノートPCで、PCMark 10 ExtendedのScoreが6,000を超えたモデルはほぼなく、少々驚いた。
CPUのグレードが低いEQ12のScoreはかなり低めではあるが、だからと言って動きが鈍かったり、アプリの操作に不安を感じるわけではない。Atom系のコアを利用してはいるが、書類作成や音楽再生などの軽作業では不快に感じる場面はない。Netbook時代のAtom系CPUの使いにくさを想像して敬遠するのは、ちょっともったいない。
3Dグラフィックス性能を比較できる3DMarkでは、DirectX 12をベースとした「Time Spy」、DirectX 11をベースとした「Fire Strike」、DirectX 12ベースだが負荷が小さめな「Night Raid」のScoreを比較した。これらのテストもScoreが大きいほど性能が高い。
このテストでも、外部GPUを搭載するNeptune HX99GがダントツのScoreを叩き出した。これに続くのがやはりSER6 Pro 7735HSで、内蔵GPUを利用する4モデルの中ではもっとも性能が高い。こうした内蔵GPUの性能の高さが、PCMark 10のScoreに強く影響しているようだ。
動画のエンコードは、CPUコア部分の処理性能を強く反映する作業の1つだ。今回はTMPGEnc Video Mastering Works 7を利用し、約3分間の動画ファイルをH.264/AVC形式とH.265/HEVC形式に変換したときにかかった時間を比較する。より短い時間で処理を終えるほうが性能が高い。
H.264/AVC形式へのエンコード作業で、もっとも性能が高かったのはNeptune HX99G。ほぼ僅差で二番手に付けているのはSER6 Pro 7735HSだ。H.265/HEVC形式へのエンコードでも同じ傾向を示している。Intel系のCPUを搭載するNUC 13 ProやVenus NAB6は、Neptune HX99GやSER6 Pro 7735HSには一歩およばずという結果となった。
またEQ12は、ほかの4モデルと比べると動画エンコード処理にかなり時間がかかっている。CPUコアの純粋な性能を比較するこうした負荷の高いテストでは、やはりAtom系コアの弱さが出てきてしまう傾向がある。
また、こうした小型PCでもPCゲームがプレイできるかどうか気になるユーザーもいるだろう。
今回はプレイ人口が多いMMORPGの「ファイナルファンタジーXIV : 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、比較的描画負荷が低いFPSゲーム「レインボーシックス シージ」、精緻な3Dグラフィックスを利用して美しい映像が楽しめる3DRPG「ファークライ6」のベンチマークテストの結果を比較してみる。
ファイナルファンタジーXIVはベンチマークテストのScoreを比較する。これはScoreが高いほうが性能が高い。レインボーシックス シージとファークライ6では、平均フレームレートを比較した。最高と最低も計測できるが、計測時ごとのブレがそれなりに大きいため、ちょっと分かりにくくなる。平均フレームレートも高いほうが性能が高い。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で、2種類の描画設定でテストした。
傾向としては3DMarkの結果に似ており、PCゲームをプレイしたいなら今回の5台の中ではNeptune HX99Gがもっとも適している。
ファイナルファンタジーXIVでは最高設定でも動きはなめらか、比較的描画負荷の高いファークライ6でも不快に感じる場面がない。PCゲームを快適にプレイしたいなら、やはりNeptune HX99Gのように外部GPUを搭載するモデルを選ぶべきだろう。
ただSER6 Pro 7735HSは、CPU内蔵GPUを利用するモデルながらもなかなか健闘している。さすがに描画負荷の高いファークライ6は厳しい結果になったが、グラフィックス設定を[低]のまま、超解像度で画質やフレームレートを向上できる「FidelityFX Super Resolution」機能を有効にした場合、[パフォーマンス]設定なら平均FPSは69まで向上し、プレイ中はほぼ引っかかりを感じない状態になる。ほかの3モデルではFidelityFX Super Resolutionを有効にしても、プレイ中の操作感が大きく向上することはない。
SER6 Pro 7735HSはかなりの静音性を発揮
次に、利用時の状況や拡張性について比較していこう。動作音だが、今回取り上げた5モデルについてはかなり静かと言ってよい。少なくともアイドル時や軽作業時に、ファンの動作音が気になるモデルはなかった。2、3年前の黎明期の頃は、アイドル時でもかなりうるさいと感じるモデルもあったが、そうした時代と比べると隔世の感すらある。
もちろんベンチマークテスト中は、CPUやCPU、ディスクリートGPUの温度が上がり、それを冷却するためにファンの回転数が上昇するため、動作音は大きくなる。「ファー」と風切り音が鳴る頻度が高いのは、Neptune HX99GとNUC 13 Proだった。性能が高い分、熱源も多いNeptune HX99Gは当然だ。またNUCは昔から動作音は大きい傾向があり、NUC 13 Proもそうしたチューニングが行なわれているようだ。
一方でベンチマーク中でもかなり静かだな、と感じたのはSER6 Pro 7735HSとEQ12。搭載CPUの発熱自体が小さいEQ12は納得の結果だが、SER6 Pro 7735HSはNeptune HX99Gに次ぐ性能ながら、かなり静かに利用できる。
とは言え、Neptune HX99GやNUC 13 Proにしても掃除機のような音がするわけではないし、テストが終われば早々にファンの回転数は低下して動作音はもとに戻る。
ただ、「静かだ」というだけでは不安だろう。冷却不足という可能性もあるからだ。そこで今回は、PCゲームのプレイ時を想定した3DMarkのStressTest(実行したのはTime Spy 20回ループ)と、CPUに大きな負荷がかかる状況を想定した「Cinebench R23」の実行中に、CPU温度がどういう状況になるのかをチェックしてみた。
アイドル時の温度は、起動後10分間放置した際の最低値だ。どのモデルも40℃前後であり、静かではあるが冷却不足というわけでもないことが分かる。書類作成やWebブラウズなどの軽作業を行なっても50℃前後であり、どのモデルも静かに利用できた。
一方で高負荷時の温度が高かったのはNUC 13 Pro。100℃はダントツのトップだが、ただテスト中ずっと100℃が維持されているわけではない。
たとえばCPUに連続的な負荷をかけるCinebench R23中は、テスト開始当初にクロックが4.2GHzまで上昇し、CPU温度も100℃に達する。しかしその後すぐにクロックが3.6GHz前後まで低下し、温度は80℃前後で推移する。
こうした挙動を踏まえると、CPU温度については3DMark時とCinebench R23の両方で80℃を超えるSER6 Pro 7735HSがもっとも高いと言ってよいだろうか。
温度変化を見るとNUC 13 Proのように大きく低下することはなく、こうした温度がほぼ維持される。それでも危険を感じるような温度ではないし、動作音の小ささを考えると、ギリギリのところでファンの回転数をうまく調整していることが分かる。
性能の高さと冷却性能を両立しているのはNeptune HX99G。高負荷時でも71~74℃とかなり安心感がある。グラフには記載していないが3DMark中のGPU温度も69℃と、長時間のゲームプレイでも熱暴走の心配はなさそうだ。大型のヒートシンクと2基の冷却ファンの効果は大きい。
消費電力は、温度計測時と同じアイドル時と3DMark時を比較している。3DMark時の消費電力がもっとも高いのは、当然ながら外部GPUを搭載するNeptune HX99Gである。2番目はNUC 13 Proで91.1Wに達したが、これは温度計測のときと同じく一時的なものだった。温度が80℃前後のときは、74~78Wといった状況である。
もっとも低いのはEQ12で、何と3DMark時でも30Wを切っていた。次点はSER6 Pro 7735HSで63.8W。性能ではNeptune HX99Gに次ぐ存在ながら消費電力はかなり低く、使い勝手に優れた小型PCと言ってよいだろう。またアイドル時はNeptune HX99GとVenus NAB6以外は10Wを切っており、小型PCは総じて省電力であることが分かる。
天板をプッシュすればすぐに内部にアクセスできるVenus NAB6
最後に拡張性をチェックしてみた。どのモデルでもメモリやSSDの交換に対応しており、足りなければ拡張して容量を増やせる。
内部へのアクセス方法が気になるところだが、もっとも簡単なのはVenus NAB6。ロック用のツメがある天板手前をぎゅっと押すとロックが解除され、天板が外れる。天板を外せば、メモリスロットやM.2対応SSDを挿すスロットにはすぐにアクセスできる。
NUC 13 Proではスタンドを固定している4本のネジを引っ張ると、底面がそのまま外れる構造になっている。NUCでは伝統になっている構造であり、作業に悩むことはないだろう。
Neptune HX99Gのネジ止めされている底面を外すと、おそらくはメモリやSSDの放熱用として組み込まれている金属板がある。この金属板は4カ所でネジ止めされているだけなので、各スロットへのアクセスは簡単だ。2280サイズのM.2スロットを2基備えており、M.2対応SSDを「追加」できるのはNeptune HX99Gだけの強みだ。
EQ12とSER6 Pro 7735HSは非常に似た構造を採用している。どちらも底面を外すと、2.5インチSSDをくみこめるシャドウベイとして利用できるプラスチックパネルが見える。メモリスロットやSSD用のM.2スロットにアクセスするには、このプラスチックパネルも外す必要があるのだが、その固定ネジがかなり奥のほうにあり分かりにくい。
特にEQ12では、固定ネジが軸が細いドライバでないと届かない場所にあるため、細身の精密ドライバが必要だ。また、プラスチックパネルに組み込まれた小さなファン用のコネクタや、SATAドライブを利用するためのリボンケーブルを引きちぎらないよう、慎重に作業したい。
このように、今回取り上げたモデルの中ではEQ12とSER6 Pro 7735HSの難易度は高めだ。とは言え手元の様子がよく見えるようライトを付け、明るい場所で慎重に作業すれば、それほど苦労するわけではない。
PCゲーム前提ならNeptune HX99G、バランスのよさが光るSER6 Pro 7735HS
前回の小型PC企画でも感じたことだが、今回の5モデルも完成度は非常に高い。少なくともそれぞれのモデルの性能は、日常的な利用には十分なレベルに達しており、Windows 11や各種アプリの操作で不満を感じる場面はまったくない。
そうした5モデルの中でいくつかベストチョイスを上げるなら、一芸に秀でたNeptune HX99Gは最有力の候補となるだろう。外部GPUを搭載することで、CPU内蔵GPUを利用するほかのモデルを圧倒する3D描画性能を備えており、フルHDクラスなら最新のPCゲームも快適にプレイできる。
バランスのよさでは、SER6 Pro 7735HSを推したい。CPU内蔵GPUを利用するほかの3モデルと比べれば、あたま1つ抜けた性能を示しており、設定しだいではPCゲームもプレイできるという汎用性の高さも魅力の1つだ。CPUの温度はともかく、消費電力も低い。
そもそもSER6 Pro 7735HSが搭載するRyzen 7 7735HSでは、1つ世代が古いRyzen 6000シリーズと同等のCPUコアとGPUコアの構成を採用する。にも関わらず最新の第13世代Coreシリーズを搭載するNUC 13 Proが一歩およばない、という結果にもちょっと驚いた。最新の「Zen 4」コアと「RDNA3」世代のGPUを組み合わせた最新CPU「Ryzen 7040」シリーズを採用する小型PCの発売も迫っており、こうした差はまたさらに開いていくのだろうか。
性能面ではやや振るわなかったEQ12だが、今回はライバルが強過ぎた。性能検証のところでも述べたが、少なくともWindows 11や各種アプリの操作で不満を感じる場面はない。youtubeにアップロードされている4K解像度の動画も、普通に再生でき、軽作業中心なら問題なく利用できるはずだ。価格もほかの小型PCと比べるとかなり安く、ダークホース的な存在と言える。
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