欧州宇宙機関(ESA)は先週、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)がオリオン星雲のガスの濃い領域を観測し、「星間有機化学の土台」となり得るかもしれない炭素分子を発見したと発表しました。
ESAのリリースには、今回初めてこの分子が宇宙で検出されたと書かれています。地球から1350光年離れた原始惑星系円盤「d203-506」で発見されたそうで、ガスと塵に囲まれている同天体には(太陽の質量の10分の1ほどの)小さな赤色矮星があるとのこと。この発見の予備研究がNatureに掲載されました。
検出されたのはメチルカチオン(CH3+)という陽イオンの分子で、宇宙で最も豊富な元素の水素には効率的に反応しないものの、他の分子とはよく反応します。
イオンは電荷を持つ原子または分子で、陽イオンは正電荷を帯びたイオンのこと。CH3+はこのユニークな特性のため、星間化学において重要な炭素分子だという説が立てられています。
「今回のCH3+の検出は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の驚くべき感度を実証するだけでなく、仮定された星間化学におけるCH3+の重要性を証明するものです」と、パリ=サクレー大学の分光学専門家で研究の共著者Marie-Aline Martin-Drumel氏は、ESAのリリースにコメントを寄せています。
JWSTの撮影能力は一段上
原始惑星系円盤の撮影では、JWSTの威力が遺憾なく発揮されました。
2021年12月に打ち上げられた同望遠鏡は、2022年7月から科学画像の公開をスタート。赤外線と近赤外線の波長で観測するため、可視光を観測するハッブル宇宙望遠鏡などから、多くの天文現象を覆い隠していたガスと塵の向こう側を見通すことができます。
このような理由からJWSTは高密度なガスと塵の雲の奥深くに生じる星形成の高温の領域のような、内部での現象を撮影する唯一無二のツールとなっています。原始惑星系円盤が属するオリオン星雲も、JWSTとハッブルとではこんなにも見え方が違います。
星雲の画像は、どちらも恒星からの紫外線放出がガスと塵の高温な領域を形成する光解離領域(PDRs)を撮影し分析する科学共同研究PDRs4Allの一環で取得されたものです。
上のコラージュ画像の左側の大きな画像はJWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)で、右上の小さな画像は中間赤外線装置(MIRI)で撮影されました。右下はその2つが捉えたd203-506を合成した画像です。
この合成画像は、ガスと塵の広大な一帯からたった1つの星系を取り上げるというJWSTの性能があってこその成果です。この星系は比較的近くにありましたが、同望遠鏡は遠方の光を拡大する重力レンズ効果で、初期宇宙の原始銀河を観測することもできます。
JWSTはわし星雲の中にある創造の柱も、昨年撮影しています。同じ構造でありながらも、ハッブル版とJWST版とではまったく雰囲気が異なっていました。
Source: ESA, Webb Telescope(1, 2), Nature, PDRs4All
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