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Monday, July 10, 2023

西川和久の不定期コラム 第13世代Core搭載で正統進化の14型ノートThinkPad X1 Carbon Gen 11 - PC Watch

ThinkPad X1 Carbon Gen 11

 レノボ・ジャパンは4月18日、CPUに第13世代CoreもしくはRyzen 7000シリーズを搭載した新型ThinkPadを一斉に発表。順次販売を開始した。今回はその中から「ThinkPad X1 Carbon Gen 11」が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

第13世代Coreを搭載となったThinkPad X1 Carbon

 同日、レノボ・ジャパンからかなりの数の新型ThinkPadが発表された。ThinkPad X1 Carbon Gen 11、ThinkPad X1 Yoga Gen 8、ThinkPad X1 Nano Gen 3のほか、ThinkPad X13 Gen 4、X13 Yoga Gen 4、さらにT14s/T14、L13/L13 Yoga、L14、L15が展開されている。プロセッサはほとんどがIntelだが、L13/L14/L15に関してはAMDモデルも含まれている。

 この内、X1を冠するのはCarbon、Yoga、Nanoの3モデル。特徴は順にスタンダード、2in1、小型軽量となるだろう。今回見ていくのはX1 Carbonで、「ザ・14型」と言えるモデルとなる。仕様は以下の通り。

【表1】「ThinkPad X1 Carbon Gen 11」(21HM0035JP)の仕様
プロセッサ Core i5-1335U
(Pコア×2+Eコア×8/12スレッド、クロック最大4.6GHz、キャッシュ12MB、TDP 15W/最大55W)
メモリ 16GB LPDDR5
ストレージ 256GB SSD(PCIe NVMe OPAL 2.0)
OS Windows 11 Pro
ディスプレイ 14型非光沢IPS 1,920×1,200ドット(16:10)液晶、10点マルチタッチ対応
グラフィックス Iris Xe Graphics(80 EU)
ネットワーク Wi-Fi 6E対応、Bluetooth 5.2、LTE-Advanced(Nano SIMカード)
インターフェイス Thunderbolt 4×2、USB 3.0×2、フルHD Webカメラ(顔認証対応、プライバシーシャッターあり)、音声入出力、キーボードバックライト
サイズ/重量 約315.6×222.5×15.36mm/約1.27kg
バッテリ/駆動時間 4セル(57Wh)/約19.5時間
価格 40万4,140円

 プロセッサは第13世代(Raptor Lake)のCore i5-1335Uで、Pコア×2+Eコア×8の12スレッド。クロックは最大4.6GHzで、キャッシュ12MB、TDP 15W(最大55W)。Core i5なのでミドルクラスのSKUとなる。

 メモリはLPDDR5で16GB、ストレージはPCIe NVMe OPAL 2.0の256GB SSD。最近のノートPCとしては容量が少なめだ。OSはWindows 11 Pro。バージョン22H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価している。

 グラフィックスはIris Xe Graphics。外部出力はHDMIとThunderbolt 4が利用でき、最大でそれぞれ3,840×2,160ドット/60Hz、5,120×3,200ドット/60Hzが出力できる。ディスプレイは14型非光沢IPS 1,920×1,200ドット(16:10)液晶で、10点マルチタッチにも対応する。

 ネットワークはWi-Fi 6E、Bluetooth 5.2に加え、LTE-Advancedに対応(Nano SIMカード)。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 4×2、USB 3.2×2、フルHD Webカメラ(シャッターあり)、音声入出力、キーボードバックライト。WANが5G未対応なのがやや残念だ。

 最大19.5時間駆動の4セル(57Wh)のバッテリを内蔵し、サイズは約315.6×222.5×15.36mm、重量は約1.27kg。そして今回の構成で直販は40万4,140円。今年に入って円安の影響か大手ノートPCの価格が少しずつ手が出にくいレンジに入りつつある。

前面。パネル中央上にシャッター付きのWebカメラ。フチはそれなりに狭い
斜め後ろ。マットブラックなのだが天板はカーボン柄。ThinkPadの「i」「の点の部分が赤く光る

 筐体はマットブラックなThinkPadそのものだが、天板はカーボン柄となっている。重量は実測1,261gで、14型の見た目とのギャップもあって、持つとかなり軽く感じると同時に、MIL-STD-810Hに準拠した堅牢性を備える。

 前面はパネル中央上にプライバシーシャッター付きのWebカメラを装備。フチはそれなりに狭い。左側面にThunderbolt 4×2、USB 3.0、HDMI。右側面にロックポート、USB 3.0、Nano SIMカードスロット、3.5mmジャックを配置。ディスプレイは180度開くことができる。

 裏面は、手前に2つ、後方に1本のバー形状のゴム足を装備。手前左右にスピーカーを内蔵し、後部のスリットからファンが見える。付属のACアダプタはサイズ約9×5×2cm、重量197g、出力65W。汎用のUSB PD対応充電器も利用できる。

左側面。左から、Thunderbolt 4×2、UISB 3.0、HDMI。ヒンジは180度開くことができる
右側面。左から、3.5mmジャック、Nano SIMカードスロット、USB 3.0、ロックポート
USB 3.0 Type-Aポートがギリギリ入る厚み
裏面。手前に2つ、後方に1本のバー形状のゴム足。手前左右にスピーカー。後部のスリットからファンが見える

 14型のディスプレイは、明るさ、コントラスト、発色ともに十分で、タッチの反応もよい。ただし視野角に関しては、覗き見防止のPrivacy Guardの関係で狭い。基本的にビジネスノートなので問題ないと思うが、見にくい場面もあるかもしれない。

 i1 Display Proを使い特性を測ったところ、最大輝度490cd/m2とかなり明るい。最大から-4が140cd/m2、-5が106cd/m2。従って前者で計測した。黒色輝度はOLEDではないのに0.000cd/m2と優秀。リニアリティは結構いいのだが、青だけがほかからズレているのが分かる。

測定結果1。白色点と黒色輝度
測定結果2。R・G・Bのリニアリティ

 キーボードは6列/89キーのJIS配列。もちろんTrackPointとThinkPadクリックパッドを備える。打鍵感はさすがThinkPadといったところで、とてもよい。本連載ではいろいろなノートPCを触っているが、ThinkPadに関しては独特の打ちやすさがある。バックライトはオフおよび2段階の明るさ調整が可能。なお、電源ボタンは指紋認証センサーを兼ねている。

 キーピッチは主要キーが約19mm。ただしEnterキー周辺が若干狭い。加えて「Home」、「End」が上列にあるのは好みが分かれる部分かもしれない。パームレストおよびThinkPadクリックパッドは十分広く、TrackPointとボタンによる昔ながらの操作も可能だ。

キーボードは6列/89キーのJIS配列。もちろんTrackPoint/ThinkPadクリックパッド搭載
主要キーのキーピッチは約19mm。Enterキー周辺が若干狭い。電源ボタンは指紋センサー兼
キーボードバックライトはオフと点灯時で2段階の明るさが選べる

 Webカメラは最大1080p/30fps。写りは自然でよく、Web会議用途なら十分な画質と言える。デジタルズーム、ホワイトバランスや露出補正にも対応しており、IRカメラ/人感検知機能も備えている。なお、マイクのノイズキャンセリングなどは後述する「Lenovo Commercial Vantage」に統合されている。

 騒音は試用した範囲では特に気にならなかった。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード上のスペースおよび裏面奥側約3分の1(スリット周辺)が熱くなる。

 サウンドは裏面手前にスピーカーがあり、間接音として耳に届く。ThinkPadなのであまり期待していなかったが、パワーがあり、質感も結構よく、少し驚いてしまった。

重量は実測で1,261g
付属品のACアダプタ。サイズは約9×5×2cm、重量197g、出力65W

バッテリは実働10時間。LTE対応でどこでもネット接続

 初期設定では、壁紙がいつものThinkPadっぽいものに変わっている。これだけでもThinkPadを触っている気になるから不思議なものだ。Core i5、16GBメモリ、256GB SSDと言う構成なのでストレスなく快適に操作できる。

 SSDは容量256GBの「UMIS RPETJ256MKP1MQD」。検索しても型番と一致するものが見つからなかったが、CrystalDiskMarkの結果はシーケンシャルリード3,757.740 MB/s、シーケンシャルライト2,269.293MB/sとそれなりに出ている。Cドライブのみの1パーティションで約236GBが割り当てられており、空き容量は191GBと、少し心許ない。BitLockerで暗号化が施されている。

 Wi-FiはIntel Wi-Fi 6E AX211で、BluetoothもIntel製。WANはFibocom L860-GLを内蔵するが、5G未対応なのが残念だ。Nano SIMカードに関しては、「ネットワークとインターネット」→「携帯電話」→「オペレーター設定」から設定できる。標準ではmopera U系しか無いので、それ以外の場合はAPNを設定する必要があるものの、一度つながってしまうと、電波さえあればいつでもどこでもインターネットが使えるというのはやはり便利だ。

初回起動時のデスクトップ。ThinkPadらしい壁紙に変更
デバイスマネージャ/主要なデバイス。SSD 256GBは「UMIS RPETJ256MKP1MQD」、Wi-FiはIntel Wi-Fi 6E AX211、BluetoothもIntel製、WANはFibocom L860-GL
ストレージのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで約236GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化済み
オペレーター設定。標準ではmopera U系しかないので、それ以外の場合はAPNを設定する必要がある

 プリインストールのアプリケーションは、「Lenovo Commercial Vantage」、「Lenovo View」と言ったレノボ製のツールと、「Dolby Access」、「Realtek Audio Console」、「Synaptics Fingerprint Reader Preboot Manager」などとなる。

Lenovo Commercial Vantage
Lenovo View

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Officeを使用した。

 パフォーマンスに関しては、ここのところ第13世代Core搭載のノートPCをいくつか試用しているが、Core i5かCore i7かが違う程度でほぼ想定内のスコアとなっている。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeの結果は10時間11分(電源モード/バランス、明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様では最大19.5時間だが、テスト内容を考慮すると妥当なところだろう。いずれにしてもこの構成で10時間以上なので十分と言える。

【表2】PCMark 10 v2.1.2600のベンチマーク結果
PCMark 10 Score 4,899
Essentials 9,488
App Start-up Score 14,220
Video Conferencing Score 6,765
Web Browsing Score 8,879
Productivity 6,560
Spreadsheets Score 6,948
Writing Score 6,194
Digital Content Creation 5,127
Photo Editing Score 8,002
Rendering and Visualization Score 2,886
Video Editing Score 5,839
【表3】PCMark 8 v2.8.704のベンチマーク結果
Home Accelerated 3.0 4,260
Creative Accelerated 3.0 N/A
Work Accelarated 2.0 3,200
Storage 5,068
【表4】3DMark v2.26.8125のベンチマーク結果
Time Spy 1,256
Fire Strike Ultra 964
Fire Strike Extreme 1,824
Fire Strike 3,538
Sky Diver 11,662
Cloud Gate 16,260
Ice Storm Extreme 74,816
Ice Storm 97,747
【表5】Cinebench R23のベンチマーク結果
CPU 5,284 pts
CPU(Single Core) 1,573 pts
【表6】CrystalDiskMark 6.0.0のベンチマーク結果
Q32T1 シーケンシャルリード 3,757.740MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト 2,269.293MB/s
4K Q8T8 ランダムリード 443.494MB/s
4K Q8T8 ランダムライト 297.604MB/s
4K Q32T1 ランダムリード 405.575MB/s
4K Q32T1 ランダムライト 367.971MB/s
4K Q1T1 ランダムリード 47.705MB/s
4K Q1T1 ランダムライト 132.419MB/s

 以上のように「ThinkPad X1 Carbon Gen 11」は、第13世代Core i5-1335U、メモリ16GB、ストレージ256GB SSD、そしてパネルに14型非光沢IPSタッチ対応液晶を搭載。加えてまさしくThinkPadといった打鍵感のよいキーボードを装備し、重量1.27kgで約10時間のバッテリ駆動とモバイルノートPCとしては十分な性能を備えている。

 試用機の構成ではストレージの少なさや価格面が気になるが、使い心地や高い耐久性など「ザ・ThinkPad」なノートPCを使いたいユーザーにはおすすめしたい製品だ。

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