ISSの太陽電池台を取り付け
日本の若田光一宇宙飛行士は、昨年10月から国際宇宙ステーション(ISS)に滞在しています。これが5度目の宇宙飛行です。およそ半年間の長期滞在をして、宇宙でのこれからの国際協力で目指すことになっている、月や火星の探査を見据えた実験に挑んでいるのです。
その若田さんが、さる1月20日夜から21日朝にかけて自身としては初めての船外活動を実施しました。ISSの中央部のハッチ(出入り口)から宇宙空間に出た若田さん(写真1)は、手すりを伝って慎重に船外を移動し、米国のニコール・マン宇宙飛行士とペアを組んで(写真2)、新型の太陽電池を設置する台を取り付ける任務などを無事完了しました。船外の作業は長時間かかり、若田さんがハッチを出てから戻るまでの時間は7時間21分に及びました。
作業を終え、ISS内部に戻る直前(写真3)、若田さんは「ご支援いただいたみなさん、ありがとうございました。明るく輝いているお月さまがとても印象的でした。新たな宇宙探査に私たちを導いてくれているみたいでした」と語りました。
ISSは、宇宙飛行士たちの日常生活や実験などに必要なエネルギーを供給するために、8カ所に太陽電池パネルを装備しています。それらは2000年から09年にかけて取り付けたもので、年月とともに老朽化が進んでいます。ISSは30年まで使用しようということになったので、エネルギーの安定供給を確保するために、今年の6月ごろまでには、新型の太陽電池に取り換えることが期待されています。
若田さんは、これまで4度も宇宙に行ったのに、船外活動の経験がなかったので、いきなり7時間以上も宇宙空間に出て働き続けるのは大変だっただろうと推察します。私は米航空宇宙局(NASA)が配信した映像をワクワクして見ていました。太ももの部分に赤いラインが入った船外活動服姿の若田さんは、電動の工具を使って試行錯誤しながら、マン飛行士と一緒に太陽電池の台の取り付けを懸命にやっていて、何だかうれしくなりました。
作業を終了して、エアロックをへてISSの内部に無事に戻った若田さんが、同僚にヘルメットを外してもらった瞬間に、ちょっと「きつかったなあ……」という表情を見せ(写真4)、その直後に浮かべた安堵の笑みが、とってもすてきでした。
米国に立つ前に電話で話した際、「今度は船外活動をする姿が見たいなあ」と言ったら、「ええ、できることなら私も満喫したいです」と明るい声で話していた若田さん。帰国したらいろいろとその経験を聞かせてくれることでしょう。楽しみですね。でもその前に、残りの数多くの任務を果たして、無事に地上に戻ってくれることを祈っています。
的川泰宣さん
長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉教授。1942年生まれ。
日本宇宙少年団(YAC)
年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp
「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載開始。カットのイラストは漫画家の松本零士さん。
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