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Wednesday, August 31, 2022

「The Last of Us Part I」レビュー - GAME Watch

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントはPS5用サバイバルアクション「The Last of Us Part I」を9月2日に発売する。本作は2013年にPS3向けに発売された「The Last of Us」のフルリメイクである。本作は2014年にはPS4向けのHDリマスター版も発売されており、プレイステーションを代表するタイトルの1つと言える。

 PS5版ではグラフィックス、サウンドなどを1から再構築することで、「PS3ではできなかった、自分たちが表現したかったものを実現できた」とスタッフが語る作品となっている。ゲームの要素そのものは変わらないが、グラフィックス、サウンド、敵のAIなどすべてに最新技術が投入されており、より高い臨場感を感じられる作品となっている。

 今回、発売に先がけて本作をプレイすることで2013年にはじめて味わった衝撃を再体験した。スタッフの情念が吹き出してきそうな強い思い入れで「ポストアポカリプス」本作は独特の迫力がある。その臨場感がPS5でのフルリメイクでさらに強化され、世界に引き込まれる感触を味わうことができた。世界が崩壊したとき人はどう生きていくのか、どう生きれば良いのか? その強烈な問いかけを感じることができる作品だ。

【『The Last of Us Part I』 ローンチトレーラー】

文明が崩壊した世界でどう生きるか? 何度も問いを叩きつけてくるストーリー

 「The Last of Us Part I」は、"現代文明が崩壊した世界"が舞台となる。カビに冒された食料をきっかけに寄生菌がまん延、その寄生菌は短時間で人間の脳に繁殖、自我を奪ってしまう。寄生された人間は凶暴化し他者を襲いはじめる。菌は感染者に噛まれることで伝染し、瞬く間に感染を拡げていった。

 主人公・ジョエルは娘サラと暮らしていたが、パンデミックによる大混乱の中、秩序を維持しようとする兵士に撃たれサラを失ってしまう。それから20年、人々は軍による厳しい統制によって管理され細々と生きながらえていた。ジョエルはテスという女性と共に運び屋の生活を送っていた。

【一変した世界】

20年前のサラとの日々。平和な日常は突然崩壊する
20年後、ボストンでは人々は隔離地域で軍の厳しい統制の元暮らしていた
街の外は無秩序の廃墟が広がっている。そして闇の中には感染者の姿が……

 テスとジョエルは「1人の女の子を送り届けて欲しい」という依頼を受ける。依頼主は組織「ファイアフライ」のリーダー・マーリーン。彼女は怪我を負い仲間を失った自分の代わりにエリーという女の子を仲間の元に送って欲しいというのだ。街の外では軍が目を光らせていて逃亡しようとする人は殺されてしまう。しかも壊滅したファイアフライの残党を狩りたてている。その危険な任務をテスは承諾する。

 そしてエリーを連れて移動中、2人は彼女の"秘密"を知るのだ。エリーは10日も前に感染者に噛まれた。にもかかわらず彼女に症状は現れない。エリーは"免疫"を持っている。だからこそファイアフライは彼女が必要なのだ。彼女から「ワクチン」が作れる。テスとジョエルは自分たちが人類の希望の鍵をにぎっているのだと知る。

 しかし合流地点にいるはずのファイアフライは全滅していた……。テスもまた2人を助けるための犠牲となる。ジョエルはテスの遺志を継ぎ、14歳の女の子であるエリーを守りながらファイアフライを探すことを決意する。……こうして2人の過酷な旅が始まったのだ。

エリー。彼女は人類の未来に関わる重大な秘密の鍵を握っている
テスはエリーをファイアフライの元に届けることを決心するが……

 「The Last of Us Part I」はサバイバルアクションだ。プレーヤーはジョエルを操作しエリーを守りながら様々な難関を突破していく。文明が崩壊して20年、2人の行く道はうち捨てられた廃墟だ。しかしそこには菌に冒された"感染者"達がいる。

 感染者は脳を菌に支配され、その菌を繁殖させるために他者を襲い続ける。脳を支配された生ける屍となった彼等は音に敏感になり、物音を聞くとその場に殺到し獲物を襲う。俊敏な動きから「ランナー」と呼ばれる。

 そして感染が進んだ者は胞子が頭蓋から飛びだしまるでキノコのような頭部を持つ。彼等は口から出す超音波を反響させて動く者を探す特性から「クリッカー」と呼ばれる。クリッカーは力が強く素手では全く太刀打ちできない。しかし視覚がないため静かに動けば近づくことも可能だ。背後からナイフで襲えば倒すことができる。

 このため彼等がいる地域では見つからないように移動し、物音に気をつけて行動していく基本はステルスアクションとなる。ジョエルは聞き耳を立てることでランナーやクリッカーの位置を壁越しでも認識できるので、やり過ごしたり、背後をとることもできる。またわざと物音を立て敵を誘導し、まとめて火炎瓶で焼き殺すことも有効だ。

【感染者達】

まだ感染が進んでいない「ランナー」は動きは俊敏だが格闘戦で倒すことも可能
頭がキノコ状になった「クリッカー」。強力で近づかれたら死が待っている
ジョエルは聞き耳を立てて壁の向こうの動きを察知することが可能だ

 世界は崩壊しても人間は生きている。ジョエル達のような旅行者は、侵入者を待ち受けるハンター達の格好の獲物だ。ジョエルの敵は感染者だけではない、むしろ人間こそ大きな脅威となる。そして「The Last of Us Part I」の世界は物資の乏しい過酷な世界だ。銃弾は常に不足しているし、ゴミ箱や遺棄されているものから使えるものをなんとか探しながら、応急キットや火炎瓶、手製のナイフなどを作っていく。

【人間の恐ろしさ】

軍隊はこちらをファイアフライの残党としてジョエル達を追う
テリトリーに入ってきたよそ者を容赦なく襲ってくる者も多い

 PS5版で一番感心させられるのはグラフィックスだろう。崩壊した街の遠景、夕闇や夜の不安をもたらす景色、そして思わず尻込みしそうな暗闇。崩れそうなビルの中や湿気が感じられそうなフィールドなどそのグラフィックスの質感は本作の最大のウリだ。壊れるオブジェクトも増えており、より迫力のあるフィールド描写がなされている。ムービーシーンでのキャラクターの表情や目の光など本作のグラフィックスはPS5のポテンシャルが実感できる。

 敵の動きは「The Last of Us Part II」のAIを活用することでよりリアルになっている。ただ単に強くなっているわけではなく、例えばわざと物音を立てたり、うまく視線を切ることで、敵がこちらの位置を勘違いをするなど高度な駆け引きも楽しめる。またパートナーの動きも自然になっており、より仲間と共に戦っている感覚が味わえた。

 本作のゲーム体験はやはり格別だ。ゲーム性ももちろんだが、やはりストーリーが良い。文明が崩壊した世界でも生き抜く人達、他者を踏みつけにしなければ生きていけない過酷な世界、それでも人は生き続ける、そこに意義や意味はあるのか? 「ジョエルとエリーの絆」を幹に描かれる強烈な問いかけは、文明社会に生きている我々にも様々なことを考えさせられる。過去にプレイしたことのある人にもオススメだが、本作がはじめてという人にこそ遊んで欲しいタイトルだ。

様々なプレイにこだわりたくなるゲームシステム

 ここからはゲームシステムをもう少し細かく紹介していこう。「The Last of Us Part I」は使える物資が少ない世界だ。ゴミ箱の中、残骸、放置されたままの場所などで使える部品を見つけ出し、組み合わせていく。

 この製作システムで面白いのが「応急キットと火炎瓶が同じ材料で作れる」というところ。回復アイテムを重視するか、火炎瓶を作るか、火炎瓶は特に感染者に対して有効なので悩ましい。応急キットは治療に時間が必要で治療中に攻撃を受けるとキャンセルされてしまう。また、時には戦闘時にアイテムを作らなくてはいけない場面もある。いかに相手の視点を切り、時間を稼ぐかも重要だ。

【材料を集めろ!】

材料を拾い集める。役に立つものは希少だ
材料を集めてアイテムを作る
火炎瓶は敵をまとめて燃やすことができる
サプリメントを集めることで能力を強化できる

 ライフルや弓、ショットガンなど本作では様々な武器が登場し、これらを強化していくのだが、手に入る順番はあれどプレイスタイルで大きく変わってくるところがある。筆者は至近距離でのショットガンが好きなのだが、音がしない弓も魅力的だ。また、狙撃できる一方狙いを付けるのに時間がかかるライフルもある。メインの武器を意識して変えるような「縛りプレイ」も楽しいだろう。

 本作において特にこだわりを感じさせる1つの要素が「作業台」による武器の改造シーン。装弾数を増やすのにマガジンを変えるのは他のゲームでもあるが、作動をスムーズにするのにスライドのすりあわせをヤスリで削り込んだり、銃の反動を抑えるためにグリップに滑り止めを巻いたりとリアリティあふれる描写で、銃の知識がある人ほどその説得力に感心させられるだろう。開発者の中にかなり詳しいガンスミスがいるのではないか、と思わせる要素だ。

【武器の改造】

マガジンを増設したり、グリップに滑り止めを付けたり、武器の改造にはかなりのこだわりが感じられる
銃器好きをニヤリとさせる描写だ

 このほか収集物や特殊な武器、テキスト、各場所にある金庫など探索要素は非常に充実している。ナイフを消費してはいることができる隠し部屋などは逃さずに入っておきたい。収集物は様々な人の生き様を教えてくれる。

 また本作をクリアするクリア時間を競う「タイムアタックモード」や、死ぬとデータがクリアされるモードなど難易度を上げた挑戦も可能となる。本作は繰り返したっぷりと遊べる"深さ"も持っている。ストーリーが最大の魅力ではあるが、ゲーム性にこだわったやりこみプレイも楽しい作品なのだ。

 次ページでは本作の最大の魅力であるストーリーをもう少し掘り下げたい。

【収集物】

様々な状況を知らせるICレコーダー
ファイアフライのタグ。様々な場所で命を落としている
テキストも過去の出来事を物語る
金庫のヒントは近くにある。周囲を細かく探索しよう

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