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Thursday, March 17, 2022

「有事の円」は今や昔、米利上げで円売り加速…物価上昇に拍車の懸念 - 読売新聞オンライン

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 米連邦準備制度理事会(FRB)が年内7回の利上げを行う見通しを示したことを受け、金融市場ではドル買いが進み、一時1ドル=119円台の円安水準となった。かつての金融危機時には円高が進む局面があったが、ロシアによるウクライナ侵攻下では円売りの動きが目立つ。侵攻に伴う供給制約に円安が重なり、物価上昇が日本経済回復の重しになってきた。

 ニューヨーク外国為替市場では16日、FRBのパウエル議長が記者会見で米経済に強気の見方を示すと、ドル買いが広がった。円相場は一時1ドル=119円台をつけ、2016年2月以来、約6年1か月ぶりの円安水準となった。

 利上げに進む米国に対し、日本銀行は大規模な金融緩和策を継続する意向で、金利差が拡大するとの見方から円安・ドル高が進んだ。

 日銀は長期金利を0%程度に抑え込む金融緩和策をとっている。変動幅の上限の0・25%を超えそうになったら、日銀が国債を買い入れるため、金利の上昇(国債価格は下落)には限りがある。米国の金利が上がり続ければ、日本との金利差はますます広がるため、円が売られやすい環境といえる。

 ウクライナ侵攻下でも、円売りの傾向が際立つ。かつては「有事の円」と称され、投資家がリスクを回避する局面では比較的安全な資産として円は買われていたが、足元の様相は異なる。

 08年のリーマン・ショックや、欧州債務危機の当時は1ドル=70~80円台まで円は買われた。有事が起こって投資家の不安が高まると、投資家はリスクの高い新興国などの資産を売り、その代わりに安全資産とされる日本円や日本国債を買う動きを強めるので、円高が進みやすかった。円が安全資産とされていたのは、海外に持つ資産の多さを示す指標「対外純資産」の潤沢さが重視されていたためだ。

 しかし、国際決済銀行(BIS)によると、約60か国・地域の主要通貨との相対的な力を表す「実質実効為替レート」(2010年=100)は約50年ぶりの水準まで低下している。米欧がリーマン・ショック後も景気回復を続けた一方で、日本は長期のデフレで相対的に評価が下がり、円安につながっているとみられる。

 エネルギーや食糧の国際市況が上昇し、輸入する日本企業が取引のためにドルを多く調達する影響もある。

 市場では「FRBはインフレが落ち着くまで利上げを続けるつもりだ」(米調査会社ビスポーク・インベストメント・グループのジョージ・パークス氏)との見方が多い。第一生命経済研究所の藤代宏一・主任エコノミストは、為替相場について「さらなる利上げの観測が強まれば、1ドル=120円台になる可能性もある」と予測する。

 ロシアの供給懸念による燃料や原材料の価格高騰に円安が重なると、物価上昇に拍車をかけ、日本経済の回復には逆風となる。

 FRBが昨年末に利上げ方針を表明して以降、株価は下落基調が続き、野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストは「投資家は世界経済を楽観視していない」とみている。

 17日の日経平均株価(225種)は2週間ぶりに2万6000円台を回復したが、年初の2万9000円台から一時は2万4000円台に落ち込んでいた。ダウ平均株価も年初来2000ドル以上、下落した。

 米投資会社社長のマイケル・ファー氏は「世界経済の先行きには膨大な不確実性がある」と指摘する。

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