米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレが何カ月も高進する可能性があっても労働市場が一段と回復するまで利上げを考えないと述べ、当局の新しい政策枠組みを堅持した。
パウエル議長は3日の記者会見で「最大限の雇用を達成するにはまだやらねばならないことはある」と述べ、「今見られるインフレは、実際のところ労働市場の逼迫(ひっぱく)によるものではない」と語った。
議長発言に先立ち連邦公開市場委員会(FOMC)は、月間1200億ドル(約13兆7000億円)の資産購入プログラムのテーパリング(段階的縮小)を2022年半ばまでに完了するペースで開始すると発表した。FOMC声明では、インフレが完全には一過性ではないことが判明した場合のリスクをヘッジする新たな文言も盛り込んだ。
パウエルFRB議長、利上げに「辛抱強くなれる」-必要なら行動も (3)
パウエル氏の議長としての任期は来年2月に満了となる。バイデン大統領は2日、次期FRB議長人事を「かなり速やかに」決めると 述べたが、誰が来年のFRBを率いるとしても、リスクの多い道筋に向き合うことになる。
超低金利が引き続き需要を刺激する一方で、米国の港湾システムや海外生産、国内労働市場の混乱が来年解消され始め、物価圧力が弱まるとの見通しにFOMCは実質的に賭けることになる。
パウエル議長は記者団に「インフレ率は高く、われわれは労働市場の動向とバランスを取る必要がある」と述べ、「複雑な状況だ」と話した。
インフレ率は今年初め以来毎月、前年同月比で当局の目標である2%を上回っている。これがさらに数カ月続けば、企業側の価格決定力が回復する可能性がある。こうしたシナリオは既に品薄の製品では顕著になっており、インフレ心理を押し上げ始めている。
その一方で、労働市場は依然として新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準をまだ数百万人下回っている。例えば、就業率は58.7%と、19年12月の61%に届いていない。
パウエル議長は「労働市場の一段の回復を目にしたいため利上げに適した時期にあるとは考えていない」と述べつつも、他方で「インフレの水準は現時点で、物価安定とは全く一致していない」と付け加えた。
これはパウエル議長主導で昨年当局が採用した新しい政策枠組みにおける今の葛藤をまさに表現したものだ。当局は最大限の雇用を達成するまで政策金利をゼロ付近から引き上げないとしており、その目標について予断を持たない方針も示している。
JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏はパウエル議長について、「完全雇用に達していないリスクと、インフレがオーバーシュートするリスクをてんびんにかけている」と述べ、「現時点では雇用の方が大きな関心事項だ」と指摘した。
原題: Powell Gambles on Inflation Easing as Fed Waits for More Jobs(抜粋)
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