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Saturday, October 9, 2021

はやぶさ2が持ち帰った石とは/中 汚染なき物質が持つ「深い情報」 - 毎日新聞 - 毎日新聞

探査機「はやぶさ2」のカプセルが大気圏に突入し、オーストラリア南部の上空で観測された光跡=2020年12月6日未明、宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供
探査機「はやぶさ2」のカプセルが大気圏に突入し、オーストラリア南部の上空で観測された光跡=2020年12月6日未明、宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供

 人類が小惑星の物質を直接分析したのは、2010年に初代の探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの物質が初めてだった。昨年12月、「はやぶさ2」が地球へ届けた小惑星リュウグウの石や砂は2度目の分析となる。「想定を大きく超えた」とは言うものの、5グラムほどしかない試料だから、慎重な取り扱いが欠かせない。はやぶさ2の初期分析について解説する2回目は、試料と格闘するメンバーたちの苦労や工夫を紹介する。【永山悦子、池田知広】

 初期分析は6チームに分かれ、次のようなことを調べる(< >内はチームリーダー)。

・リュウグウの化学組成<圦本(ゆりもと)尚義・北海道大教授>=リュウグウが周期表のどのような元素でできているかを明らかにする。

・石<中村智樹・東北大教授>=2ミリ以上の大きな石を使い、どのような鉱物が含まれるか、水を取り込んだ鉱物(含水鉱物)があるかを調べる。

・砂<野口高明・京都大/九州大教授>=0・1ミリ程度の砂を使い、「宇宙風化」と呼ばれる現象(天体の表面が太陽風や宇宙線、隕石=いんせき=の衝突などによって変化する現象)を調べる。

・揮発性物質<岡崎隆司・九州大准教授>=カプセルに入っていたガスや石から抽出する揮発しやすい性質の物質を分析し、太陽系やリュウグウの歴史を探る。

・固体有機物<薮田ひかる・広島大教授>=岩石の中にある水に溶けない有機物の構造や分布などを調べ、太陽系における有機物の歴史に迫る。

・液体に溶ける有機物<奈良岡浩・九州大教授>=水などに溶ける有機物である「アミノ酸」などを分析し、生命の材料物質の可能性を調べる。

 「ちょっとでも『怖い』と思う手順があると、そこで失敗するものです。だから、一つも不安な手順がないように準備してきました」

 そう話すのは、石の分析をする中村さんだ。中村さんは、初代はやぶさが持ち帰ったイトカワの物質、米国の彗星(すいせい)探査機「スターダスト」が06年に持ち帰った物質の分析にも携わった。地球外物質は極めて貴重なものだから、分析の失敗は可能な限り避けたい。そう思えば思うほど緊張が高まり、失敗を生みがちなのだという。

 「とても緊張する分析をする時、試料を細いガラス管に入れるなど、『ここは難しいんだ』とか『うまくいかないかもしれない』という段取りがあると、そこで絶対に失敗する。だから、『いろいろ考えずにやっても大丈夫』という方法にしなければならない」と中村さん。そこまで言うのは、「スターダストとはやぶさの分析作業で、そのような失敗をした経験があるから。もう絶対に繰り返してはならないと肝に銘じました」と明かした。

 揮発性物質を担当する岡崎さんも「シンプルな分析にした」と話す。初期分析の期間は、今年6月から1年間と決まっている。その後、…

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